【マイアミ(米フロリダ州)21日(日本時間22日)】大谷が感情を爆発させた-。第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表「侍ジャパン」は決勝で前回王者の米国に3―2で勝利し、2009年の第2回大会以来、14年ぶり3度目の優勝を果たした。「3番・DH」で先発出場した大谷翔平投手(28)=エンゼルス=は九回に7番手で登板し、無安打無失点。胴上げ投手となって最優秀選手(MVP)に選ばれ、涙を流した。
大谷はトラウトを三振に仕留めると、ベンチに向かって咆哮した(撮影・長尾みなみ)夢にまで見た瞬間だった。3-2の九回2死、世界一まで1球-。「走者なしで(エンゼルスで同僚の)トラウト選手。これが最高のシナリオだと思っていた」と大谷。フルカウントからサインが決まる。「悔いの残らない球を投げたい」。140キロのスライダーで空振りを奪うと、ベンチに向かって咆哮した。グラブをほうり投げ、帽子を投げ捨てる。大谷を中心にできた歓喜の渦。ドラマを超えた結末に声が震えた。
「夢に見ていたところなので本当にうれしい。日本の野球が世界に対して通用する、勝てるんだと。間違いなく今までの中でベストな瞬間。正直終わってしまうのはちょっと寂しい気持ちもある。みんな同じじゃないかな」
表彰式前には少しうつむき、左手で目元をぬぐった。「汗です」とごまかしたが、最高の仲間とつかんだ世界一に涙が止まらない。「少しナーバスになった」と九回先頭、マクニールに四球を与えた。3万6098人の大歓声。ローンデポ・パークにUSAコールが響く中、目に飛び込んだのは仲間の姿だった。「みんないけるぞ、という表情をしていた。勇気づけられた」。続くベッツを二ゴロ併殺に抑え、トラウトには最速164キロを記録した。
背中で、言葉で世界一に導いた。大リーグでは経験がない救援での登板を志願した。日本でもDHからの救援は2016年の1度だけ。五回が終わると左翼後方のブルペンへ。六回の攻撃中は打席に備えてベンチに走り、再びブルペンに戻った。七回の打席は遊撃内野安打に全力疾走し、両手を広げてアピール。泥だらけのユニホームで上がったのが九回のマウンドだった。