試合前から盛り上がる両国のファン。球場周辺も日本もメキシコも熱戦に酔いしれた(撮影・長尾みなみ) (WBC準決勝、日本6x-5メキシコ、20日、米国・マイアミ)日本列島が野球の感動に震えた日だった。
吉田正尚の同点3ランにバンザイし、大谷のヘルメット投げ捨て&ガッツポーズに心を揺さぶられ、村上の逆転サヨナラ打に涙…。と同時に周東の異次元のスピードに目を奪われ。山本由伸の救援力投は心を打たれたし、虎党は湯浅の出番で祈った方も。名場面テンコモリの大一番だった。
昼過ぎ。編集局に電話を入れると、普段は出社が早い当番デスク長友孝輔がまだ姿を見せていない。ピンときた。自宅でWBCを最後まで見ていたんだろう。案の定だった。
「必死で見てました。ただ、0-3とリードされた瞬間は、娘を公園に連れて行って遊んでいました。ソフトバンク担当時代も、見る場所を変えると流れが変わったんで、同じようにしたら吉田の同点ホームランが飛び出していました」
その気持ち、よ~く理解できる。何かにすがりたくなるもんだ。
「すいません。ずっと見てました」
本業よりも(?)WBCに熱中していたことを正直に告白したのはトラ番・原田遼太郎。鳴尾浜球場での2軍戦担当だったのだが…。
「練習中もアマゾンプライムを利用して、スマホで見てたんです。そうしたら、トレーニングルーム内から『よっしゃ!』の声。選手も見てたんです。先輩、きょうぐらい許してくださいね」
もちろん許す。デキの悪い先輩は、イチローが決勝打を放った2009年決勝(韓国戦)も、能見が力投した13年準決勝(プエルトリコ戦)も、阪神の試合前練習は一切取材していない。たまには、そういう記憶があってもいい。
「僕が小学校のとき、先生が『きょうはWBCの決勝戦。特別の日だから』と言って、授業をやめて、野球のテレビ観戦になったんです。あの先生のことは、今でも忘れられません」
立派な先生だ。そのおかげで、原田の野球への思いが膨らみ、スポーツ新聞の記者の道を歩んだのかも(ちょっとこじつけすぎか)。