野球とパフォーマンス。両者の関係は実に難しい。
センバツ高校野球での「ペッパーミル・パフォーマンス」が賛否両論、騒ぎになっている。
開会式直後の第1試合、一回表の1番打者が放った遊ゴロを相手がトンネル。一塁ベース上に到達した打者が、ベンチのチームメートに向かって一生懸命に〝胡椒を振りかけた〟。みんな、笑顔で大盛り上がり。2023年の高校野球は、ペッパーミルから始まったと言っていい。
当日、この瞬間を甲子園の記者席でナマで目撃した。正直な感想は「ブームに乗ってるなぁ」「楽しそうに野球してるなぁ」。ほほえましく見ていた。
まさか、「不要なパフォーマンスはダメ」と審判が注意するとは思わなかったし、これに対して当該高校の監督が反論するなんて想定外。
さらにいえば、失策の直後のパフォーマンスは相手に失礼、侮辱する行為だ、米国なら次の打席でボールをぶつけられる、などなど、とネット上で論争なるなんて、思いもしなかった。
野球は本当に不思議なスポーツだ。細かなルールが決まっているのは当然として、それ以外に「暗黙の了解」があったりする。大差の試合の終盤は盗塁をしない、送りバントはしない、などは有名だが、これが万国共通かといえば、そうではない。
日本の高校野球では、今でも大量リードのチームが送りバントしたりする。監督の言い分は「攻撃が粗くならないため」。そう考えるのなら、どうぞご自由に、と思っている。
今回の騒動では「相手のミスの直後に行うのは許せない」というのが主流を占めている。でも、何十年もプロ野球を見てきているが、相手の失策で大喜びしているスター選手を山ほど見てきた。甲子園の阪神戦で、敵失でサヨナラ勝ちしたシーンなど、監督も選手もスタンドも、狂喜乱舞だ。球場全体が相手を侮辱した、という報道は見たことがない。
今から8年前、タイガースもパフォーマンスの賛否で渦中のチームとなったことがある。