棋王獲得から一夜明け、記者会見で「六冠」の色紙を手に記念撮影に応じる藤井聡太六冠=20日午前、栃木県日光市(飯田英男撮影) ■3月21日 棋王のタイトルを新たに獲得した将棋の藤井聡太六冠にも〝弱点〟はある。「体育のソフトボールでは打てたためしがなかった」。羽生善治九段との死闘で王将位を防衛後の会見で話した。大谷翔平らWBC日本代表については「注目される試合でパフォーマンスを出せるのは素晴らしい。刺激になるし見習っていきたい」。
19日の棋王戦第4局で名人でもある渡辺明棋王を破り3勝1敗でのタイトル奪取。6冠は羽生以来史上2人目で20歳8カ月は史上最年少記録となった。これで渡辺とのタイトル戦は13勝2敗。第3局は藤井が詰みを見落としており内容的には全勝といってよく、今度は日本代表が見習う番だ。
4月には渡辺との名人戦が始まる。賞金額では竜王戦が最高だが、歴史のある名人戦に思い入れが強いファンも多い。C級2組からスタートする順位戦で挑戦権を得るまで最低5年は絶好調を維持する必要がある。一味違う重み。ゴルフのマスターズやテニスのウィンブルドンのように全棋士にとって憧れの舞台だ。
両者のタイトル戦初対局は藤井の初戴冠となった20年の棋聖戦だった。ある棋士は言う。「あのとき敗れた渡辺さんは〝すごい人が出てきた〟と認めてしまった。その瞬間から藤井さんの存在が頭上にのってしまった感じだ。相性が悪いのか、ヘビににらまれたカエルのように勝てそうな雰囲気が感じられない」。
ということは谷川浩司現九段が83年に21歳2カ月で達成した史上最年少名人も指呼の間に迫ったようだ。日々の努力で培った肉体の躍動でファンを魅了するのが大谷なら、努力のすべては頭脳に収める藤井。歴史に残る2人と同じ時代に生きた幸運に感謝したい。(今村忠)