昨年オフにDeNAを自由契約となった倉本寿彦内野手(32)が、社会人時代にプレーした日本新薬に9年ぶりに復帰する。
2015年に同社からD3位でDeNAへ入団。16年にはチーム最多の157安打を放ち、17年はフルイニング出場するなど正遊撃手として活躍した。昨年10月に戦力外通告を受けたが「プロでやりたい気持ちが強かった」とプロ野球選手にこだわり、オファーを待ち続けた。
DeNA時代に自主トレで使用した練習場などで体を動かしながら朗報を待つ日々。「年明けまで」と自分の中で設定した期限は「2月まで」「2月中旬まで」と伸ばしたが状況は変わらなかった。
「厳しいというのは分かっていました。〝期待半分、厳しい半分〟みたいな。そのうちにオープン戦も始まり、自分の中で決断すべきときが来たのかなと思いました」
自身も8年間、プロの世界で生きてきた。戦力外となった選手がキャンプイン後に獲得される例は極めて少ないことは分かっている。プロ野球界は断念するしかない。ただ、ユニホームを脱ぐ決断だけはできなかった。
「辞めるという選択肢があったのも事実ですけど、やり残したこともたくさんあった。悩んだけど、周囲やファンの方々からの続けてほしいという声で戦う気持ちになりました」
自由契約となってすぐにオファーを出してくれた日本新薬でプレーすることを決めた。倉本がプロ野球を希望しているのを知った上で「どれだけ時間がかかっていいから」と誠意ある姿勢で返答を待っていてくれたという。
日本新薬へプロで培った技術や経験をインプットし、チームに貢献することを誓った。「任されるどのポジションでもやります。若い選手が多いので負けずに頑張りたいです」。その先に見据えるのがプロ野球界への復帰だ。
「厳しい道であることは分かっています。それでも大きな目標にチャレンジしたい。プロに戻りたいんです」
神奈川・茅ケ崎市出身で横浜高のOBということもあり、横浜を本拠地とするDeNAで多くのファンから支持された。
「日本新薬入りの反響が大きくて自分でも驚きました。ファンの方々にもう1度プロのユニホームを着ている姿を見せたいと思っています。日本新薬にも若くていい選手がたくさんいるので一緒に応援してほしいです」。プレー同様に泥臭く。倉本の挑戦が始まる。(湯浅大)