大阪府吹田市の吹田署千里山交番で2019年6月、警察官を包丁で刺して拳銃を奪ったとして強盗殺人未遂罪などに問われた無職の男性被告(36)の控訴審判決で、大阪高裁の斎藤正人裁判長は20日、被告が心神喪失状態で刑事責任能力がなかったと判断し、無罪を言い渡した。心神耗弱だったとして懲役12年とした一審大阪地裁判決(21年8月)を破棄した。
被告は起訴前と起訴後、2人の医師の精神鑑定で精神疾患が影響したとされた。斎藤裁判長は、09年ごろに発症し投薬治療中だった精神疾患が、19年2月以降の急激な減薬などで幻聴や妄想の症状が急速に悪化したと指摘した。
大阪府の山中に潜伏する俳優を殺害するため拳銃を奪おうとしたとする動機や目的は「極めて唐突かつ奇異」で、精神疾患に基づいて形成されたとして「被告は重い病的体験に直接支配され行動制御能力を喪失していた」と判断した。
一審判決は、被告が事前に交番を下見したり事件後に着替えて逃走したりした行動を、合理的で被告本人の意思に基づくものだとする起訴前の鑑定医の意見を踏まえ、限定的ながら責任能力があったと認定。本人の意思はなかったとする起訴後の鑑定医の意見は信用できないと退けていた。