オープン(OP)戦を戦う阪神・岡田彰布監督(65)にとって最近一番うれしかったのは、絶不調だった大山悠輔内野手(28)が、開幕を前に調子を上げてきたことだろう。
「そら悪いときに比べたらだいぶええよ。ヒットでんときは全然でへえんかったもん。今は打席での見送り方とかな、悪いときはボール球を振ってあれやったけど、今はなあ、凡打はするけれども見極めとかが悪いときとは全然違うよ」
17日のヤクルト戦(神宮)の一回2死一塁から右翼へ適時三塁打。OP戦11試合目で初打点をマークしたときのコメントだ。
大山は「いろいろありますし、反省も含めて、まだまだ頑張ります」と決意を新たにした。15日のDeNA戦(横浜)でOP戦初のマルチ安打。初打点は3試合連続となる安打でもあった。
キャンプ直前だった。岡田監督は「(昨年)11月の安芸のキャンプで、大山の姿をみて、自覚というか、このチームでは大山を4番にしないといけないなというのが見えた」と明かした。「そこは代えたらいかんわ。4番を代えるときは(チームが)危機のときや」と期待と信頼を口にした。
だが、宜野座キャンプの実戦で結果を残せず、3月上旬のOP戦ではボール球に手を出すシーンも。岡田監督は7日のWBC韓国代表との強化試合の前、大山を京セラドームでの全体練習に参加させず、甲子園に呼び、直接指導した。
あるコーチは「大山も意気に感じないとね。岡田監督が選手個人のためにチームを離れてなんて異例中の異例だから」と話していた。練習中に選手へアドバイスすることがあったが、「特別扱いしたり、ひいきしていると思われたらアカンやろ」と、選手とは一線を画していたからだ。
だが、2004年から08年までの前回監督時に特別扱いした選手が一人いた。当時ルーキーだった鳥谷敬。開幕直後、横浜スタジアムの室内練習場に呼んでマンツーマン指導。「鳥谷は将来、必ず阪神を背負って立つ選手になるから」と、その理由を説明した。鳥谷は現役通算18年で2099安打を放った。
あれから19年。15年ぶりに指揮官として阪神に復帰した岡田監督は打線の軸となる4番に大山を指名した。もちろん期待の表れだが、もともと好不調の波が激しいタイプ。今回も不調から脱するのに1カ月もかかった。
シーズン中、何度か訪れるだろうプチ・スランプ。そこで、指揮官がどんな荒療治や対応をするか、注目したい。(三木建次)
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