開催中の大相撲春場所に時季を合わせて、その「命日」はやってくる。場所直前の3月8日は愛犬家には知られている、ハチの命日だった。待ち合わせスポットとして有名な東京・渋谷駅前広場にある「忠犬ハチ公像」のモチーフになったオス犬で、11月には生誕100年を迎える。
東京帝国大学農学部・上野英三郎教授の飼い犬だった秋田犬のハチは愛情深く育てられ、博士の送り迎えが日課となっていた。大正14年5月に博士が急逝した後も、約10年間、渋谷駅で帰らぬ主人を待ち続けた。生前のハチを同駅でよく見かけた縁者がいて、左耳が垂れ、体毛が薄汚くなったハチの様子を伝え聞いた。これが新聞記事となり、全国からの寄付金によって銅像が建立される。
老犬でさえ「忠」「義」「情」に寄って立つ行動は、人々の琴線に触れたのだろう。
昭和42年初場所後。「保守本流」「鉄の結束」といわれ、名力士を多く送り出した出羽海部屋が激しく揺れた。日本相撲協会の歴代12人(のべ13人)の理事長のうち6人が同部屋または同一門出身者。相撲界を牽引(けんいん)し、当時は「分家独立」を許さない厳しい不文律があった。
その名門の部屋付きだった元横綱千代の山の九重親方が、部屋の継承が困難となったことを受けて、出羽海親方(元幕内出羽ノ花)に独立を申し出る。NHKの大相撲解説を務める北の富士勝昭さん(80)=当時大関、のちの横綱=ら13人の力士を連れていく、とも伝えた。
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