戸郷の兄、悠大さん(左)は山本と高校の同級生だった(提供写真) 侍ジャパンの戦いに全国の野球ファン、選手の家族も熱狂している。戸郷翔征投手(22)=巨人=の兄・悠大(ゆうだい)さん(24)は、弟とともに日の丸を背負う山本由伸投手(24)=オリックス=と宮崎・都城高の同級生。日本の投手陣を支える2人の素顔を明かし、熱いエールを送った。
幼少期の戸郷(左)と悠大さん(悠大さん提供)中学時代まで球児だった悠大さんは、侍戦士の奮闘に心を熱くする一人だ。地元の宮崎県で行われたオリックスと巨人の春季キャンプに足を運び、WBCを控えた山本と戸郷を激励。「由伸に『頑張れよ』と言ったら『ありがとう』と言われました。弟とともに力を出し尽くしてほしい」と言葉に力を込めた。
山本は都城高の同級生。自身は高校でラグビーに転向したため部活は違ったが、誰からも慕われていた右腕とは親しい仲だった。「野球部の先頭にいたのが由伸でした。クールなリーダーという感じですね」と記憶をたどった。
都城高野球部のグラウンドは宮崎、鹿児島両県にまたがる霧島連山の裾野にある。部員は校舎から4キロほど離れた球場まで自転車で通い、足腰を鍛える。悠大さんは、山本の剛腕ぶりを肌身で感じたことがある。遊びでキャッチボールの相手を務めた1球目、あまりの速さに捕り損ねて球が顔に当たった。今や最速159キロの直球の威力は当時から抜群だった。
悠大さんは戸郷を「陰で努力するタイプ」と評する。弟は捕手から投手に転向した中学生の頃、自室の鏡に向かって黙々とシャドーピッチングを繰り返していた。宮崎・聖心ウルスラ学園高1年時には、遠投の記録会で117メートルをたたき出した。「別格なんだと思った」と悠大さん。自身も甲子園を目指し、中学時代はボーイズリーグでプレーしたが、弟の将来性にはかなわないと悟った。
自衛隊で働く悠大さんは中学生の頃、自宅から車で約1時間かけて練習に通った。トラック運転手の父・健治さんは多忙で、支えてくれた母・ヒトミさんへの思いもあり「自分が無理する必要はないと、野球をやめたんです」と打ち明ける。
戸郷は9日の中国戦に登板。2番手で3回を投げ、救援での大会記録を更新する7三振を奪った。悠大さんは「すごく大人になっているなと。抑えている姿を見て元気をもらいました」と実感を込めた。夢を託す弟、そして友の力投を、その目に焼き付けている。(鈴木智紘)