これが問題のシーン。韓国選手の足は確かに離れている(共同) ■3月12日 野球の韓国代表がまた貴重な〝教訓〟を残してくれた。WBCの日韓対決を振り返ったとき、アレやコレやと、いろいろと場面が浮かぶ。今回は喜びの表現こそ、ほどほどに-だ。身に染みる戒めのお返しに、日本に伝わる格言を送るとすれば「勝負事は下駄を履くまでわからない」か。
9日のオーストラリアとの1次リーグ初戦。1点を追う七回1死から代打で左中間フェンス直撃の二塁打を放った姜白虎がベンチに向かってガッツポーズを連発。静かに後方から忍び寄った二塁手は、足が離れた瞬間にタッチ。セーフの判定はリプレー検証の結果、覆った。
日本に快勝して、マウンドに国旗を立てたのは2006年大会だった。今大会も「大谷と真っ向勝負がしたいが、投げるところがなければ痛くないところに当てる」といった趣旨の発言を残した高祐錫は釈明に追われた。日本選手は相手への敬意に欠ける行為はしないし、冗談でも言わない。次は、このプレーだった。
一、三塁のベースコーチは何をやっていた? 一緒に喜んでいたのか? 声が届かなかった? ならばジェスチャーで伝えればいい。三塁ベンチの選手たちは、上体を屈めながら足元だけを見つめて近づく選手が視界に入っていたはず。なのに、だ。
「よく打ったけど、(喜びの)セレモニーのタイミングが早すぎた」とは李強喆監督。しかも二塁憤死後に中前打が飛び出していた。1点差敗戦に当事者の心中を察すると…。痛恨のミスに身が引き締まる。ニッポン野球ではあり得ない。直接対決での鮮やかな逆転勝ちが何よりの証しだ。侍ジャパンの質の高さに胸を張る。そう感じさせる〝ぬか喜び事件〟だった。(稲見誠)