アイスホッケー女子五輪3大会出場の久保英恵さん(左)とラグビー女子7人制日本代表・中村知春 2月15日、生命保険大手の太陽生命の主催で2人の女性アスリートが対談するイベントが開かれた。1人は同社がサポートするアイスホッケー女子で五輪3大会に出場した、同社広報課に勤務する久保英恵さん(40)。もう1人も同社サポート競技のラグビー女子で、7人制リオデジャネイロ五輪代表の中村知春(34)。
女子競技の普及に関する意見や、指導する立場での思いなど、いろいろ示唆に富む話が出たが、せっかくトップクラスのアスリート2人と出会えたので、質疑応答のときにこんな質問をした。
--トランスジェンダーの選手の女子競技への参加について、どんな考えをお持ちか
きっかけは1月下旬、スコットランド・ラグビー協会が、男性として出生したトランスジェンダー選手が、女子の試合に出場することを禁止すると発表したこと。禁止措置の根底にあるのは、パワーやスピードの違いによって安全性が損なわれるのではという考えだ。すでにワールドラグビーをはじめイングランド、ウェールズ、アイルランドの各協会も、同様の禁止措置を決めている。
久保さんからは「構わないのではないでしょうか。パワーが違うというのであれば、それだけのパワーを自分が身につければいいのだし、パワーだけでかなわない部分があるのなら技術で補えばいい。そうなれば自分たちのレベルも上がって、いいことなのではないでしょうか」という回答をいただいた。
中村は「そういう苦労をされてきた方から学べることは絶対に多いと思う。マイノリティーの方々の感覚を受け入れていかないとラグビーは成長しない。ぜひ、自分のチーム(ナナイロプリズム福岡)に来てほしい。来てほしいし、そういう方がいるチームと対戦したいとも思います。世界で戦ってきた相手の中には190センチを超える選手がいたし、120キロ以上の選手もいました」と、身体接触が多い競技の2人が一様に歓迎する意向を示していた。
陸上競技のようなタイムなどの数値を厳密に争う競技では、また違った考えがあるだろう。ただ受け入れる側(という表現も何だか微妙だが)の2人の回答を聞いたとき、トランスジェンダーの女子競技への参加禁止というのは、男性目線の一方的な考え方なのではないかとふいに感じた。
イベント後、中村と雑談した。
「(男性目線という点は)そうかもしれません。仲間外れにするより仲間として迎え入れることの方が大事だと思うんですが」
今後、日本でもトランスジェンダーに関する論議が出てくるだろう。もちろん、安全性については慎重に吟味しなければいけないが、中村のこの言葉は一考に値すると思う。(田中浩)