――師匠、東京湾のメバルが2月1日“解禁”になりましたが、今シーズンはどうなんですか。
「う~ん、残念だが、絶好調って感じはないな。今のところ乗合船を出している船宿自体も少ないので、断定はできないが、立地条件が一番いい横浜本牧港の船でもトップで30匹台の日が1日、2日あった程度で、浦安から出ている船では、2桁がやっとってところだからな」
――“春告魚”と書いてメバル、ずっと以前に師匠に教えていただきましたが、まさにメバルは、海に春を告げてくれる沿岸部の代表的なお魚ですものね。
「東京湾では、同じ浅場の根魚でもカサゴが周年、好釣果が上がっているのにメバルの釣果は、年々下降線を辿っているからな」
――父に聞いたんですが、東京湾ではカサゴの放流が盛んに行われているのに対し、メバルの放流はほとんど行われていないのも理由の一つじゃないかと言っていましたが…。
「父君の言う通りなんだが、致し方ない理由もあってね」
――どういうことですか。
「カサゴの“タネ(稚魚)“は、比較的簡単に手に入り“生産量”も多いんだ。『日釣振(公益財団法人 日本釣振興会)』を筆頭に各種団体が、東京湾に毎年数万匹単位でカサゴの放流を行っているが、メバルは放流したくても“タネ“を作っている施設が東日本地区にはほとんどないんだ。以前は、山口県などから長距離輸送して放流した事もあったんだが、どうしても“歩留まり(生存率)”が悪くなり、コストも掛かってしまって最近ではほとんど行われていないからな」
――へえ~、そうなんですか。
「もっとも根本的には、放流量の問題よりも東京湾の環境変化が大きな原因なんだがな」
――父も同じことを言っていました。
「その昔、東京湾の根魚と言えば、メバルとアイナメ、そしてカサゴだったんだが、今ではカサゴ一色って感じになっちまったからな」
――そういえばアイナメも釣れなくなりましたね。
「本牧の沿岸部に下根という広大な根があったんだが、埋め立て工事で3分の2以上が無くなってしまった。それが全てではないだろうが、それを契機にアイナメとメバルが激減したのは確かだな」
――それでも春にはやっぱりメバルを釣りたいですよね。10匹ぐらいを目標に出掛けませんか。
「そうだな。俺もメバル独特のあの引き込みは大好きだ。久しぶりに本牧から出掛けるか」
――ええ。父にも話しておきますね。
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