■2月4日 最もウイットに富んだ発言をする競馬の騎手は誰かと聞かれれば、武豊と自信満々に即答できる。3月15日に54歳の誕生日を迎える〝生けるレジェンド〟のコメント力は、さらに磨きがかかっているようだ。
今年の開幕レースを勝つと「リーディング、久しぶりや!」とジョーク一発。1987年のデビューから37年連続しての重賞勝ちを決めたシンザン記念では「SDGs(持続可能な開発目標)な感じでいいんじゃないでしょうか」。当意即妙。騎乗だけでなく発言も天才と感嘆する。
本業は本人の言う通りSDGsな感じだ。昨年はドウデュースに騎乗して史上最多を更新する6度目の日本ダービー制覇を果たした。53歳2カ月15日での優勝は、増沢末夫の48歳7カ月6日を抜く最年長勝利記録。今年は先のシンザン記念で重賞350勝も達成した。その全てが前人未到だから恐れ入る。
「論語」に「五十にして天命を知る」とあるが、武豊は若い頃から自分の人生が何のためにあるかを意識していたと思えてならない。彼が27歳の時、僚誌・週刊ギャロップでの連載を依頼したが断られた。理由を尋ねると「競馬専門誌では意味がないから。競馬ファンを増やすために、ファンじゃない人も読む一般の週刊誌などで発言していかないといけないんです」。20代から「競馬の伝道師」としての使命を自覚して実践していたのだ。
前人未到のJRA通算4400勝まであと1。1月21日に王手をかけてから足踏みしているだけに、本人もそろそろ決めたいと思っているのではないか。4日の小倉か5日の東京か。いずれにせよ、達成した際には気の利いたコメントをしてくれるはず。それが楽しみだ。(鈴木学)
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