私の患者に政治ジャーナリストの後藤謙次氏(73)がいる。共同通信の政治部記者で退職後はTBSの「NEWS23」のメインキャスターだったことでも知られる。
一味も二味も興味深い評論でなるほどと思うことが多い。豊かな取材経験とネットワーク、何より首相相手でも対面で論点を突くという自分の足で稼ぐ取材方法に裏打ちされているからであろう。自民党の林幹雄元幹事長代理(76)などは「その取材の的確さが好感を持たれる全てだ」と評されている。後藤氏はあるとき、心筋梗塞発作で入院したことがあった。その際の担当医の関係で当方に通院している。今はすっかり元気でアルコールなど私よりグイグイとたしなむ。
昨年12月23日付の本コラム「二階氏死亡説」が掲載された翌日、後藤氏から突然電話が入った。「水町さんと二階さんでタイアップしたのですか?」。コラムで私は、自民党の二階俊博元幹事長「死亡説」の「仕掛け人に対して改めて軽蔑の思いを向ける」と書いた。なんと当日夜、二階氏本人がCSテレビ番組で「流した者がいるなら、先にたたき殺してやらないと承知ならん」と怒りをあらわにしていたのだ。掲載日はまったくの紙面都合だし、二階氏の発言など知る由もなく青天の霹靂(へきれき)で、後藤氏にも納得していただいた。さように彼のフットワークの軽さを実感した。
一方、後藤氏の共同通信政治部時代の同僚に松崎茂一郎氏(76)という元記者がいる。細川政権などを最前線で取材し、政治記者として深い味を出していた。実は彼と私とは小中高校と一緒の同級生であった。
松崎氏は岐阜学芸大附属中、県立岐阜高、京大理学部物理学科を経て共同通信に入社した。理系だからか考え方がいつも明確なロジックと曲がらない思考回路に基づいている。昨今の政治部には相手におもねって主体性を欠く記者や記事が目立つのは残念なことである。
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