■1月31日 国際競技会から除外されたロシアとベラルーシの選手について、IOCは五輪への復帰を本格的に検討すると発表した。これを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は「もしロシア選手が国際大会に出れば、ロシアが侵攻を正当化し、テロの象徴として使うだろう」と非難。主要な国際競技連盟の会長に対し見解を求める書簡を送った。
IOCとしては自国を代表しない「中立」の立場で、戦争を積極的に支持しないことなど「厳しい条件」をつけたつもりらしいが、線引きがはっきりしない。そもそも戦争が長期化し、終結への展望も開けぬこの時期だけにIOCの発表は唐突感が否めない。
プーチン大統領とIOCバッハ会長の仲はつとに知られる。13年にバッハ氏が会長就任の際はプーチン氏が真っ先に祝電を送った。14年ソチ五輪を契機により緊密な関係となり、会長の母国ドイツでは「プーチンのプードル」と揶揄(やゆ)されたほど。16年リオ五輪でロシアの国家ぐるみのドーピング問題がうやむやになったのも裏で何かが、とささやかれた。
バッハ会長としては来年のパリ五輪という「平和の祭典」に戦争による不参加国が出ることは避けたい。完全な形で開くための布石がプーチン氏への〝忖度〟になったのか。ウクライナはもとより開催国フランスやNATO加盟国などの反発もあるだろう。今後の戦況次第では最悪ボイコットなどの動きも出るのではと気がかりだ。
「平和の祭典」は五輪のための見せかけの平和の下で行うものではなく、本当に戦争のない平和な時だからこそできるのではないか。条件はただ一つ。ロシア軍がウクライナから撤退しない限り五輪復帰はありえない。(今村忠)
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