日印協会創立120周年記念レセプションであいさつする森喜朗元首相=25日午後、東京都港区(撮影・鴨川一也) ■1月27日 元首相と呼ぶのが残念なほど、またもあきれた発言だ。森喜朗氏(85)が25日に東京都内で開かれた会合で、ロシアのウクライナ侵攻を巡る日本政府の対応について「こんなにウクライナに力を入れてしまってよいのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と公言した。
さらに「せっかく(日露関係を)積み立てて、ここまで来ている」とも。自らの功績をちらつかせて、暗にこのままでは日露関係が崩壊しかねないとの認識を示した。百歩譲って、ロシアとウクライナの戦力を比べれば森氏のように認識する向きもあろう。しかし、民主主義の西側諸国が対露制裁で団結している現実に、冷や水をかける発言だ。
しかも、ドイツが世界最強の戦車をウクライナに供与することを決めたばかり。製造国のこの決断で、欧州各国の保有する同じ戦車も、大量にウクライナへ供与される見通しとなった。ロシア軍が近く大攻勢をかけるという予測が広がる中での英断。それだけに、西側諸国の日本への信頼を落とすきっかけにもなりかねない。
元をたどれば、森氏が首相を務めた2000年当時、1期目のロシア大統領に就任したプーチン氏(70)が来日。2人は盟友とも呼ばれる関係を築き、日露外交を進めた。しかし、今のプーチン氏は人相も悪くなった。フィリピンにいて「ルフィ」などを名乗り、遠隔操作で実行犯を操る広域強盗事件の首謀者と同類。残虐な冷血漢にしか見えない。
もしも戦争被害者が身内にいれば、森氏も黙ってはいられまい。プーチン氏と直接会えなくとも、手紙やSNSなどでまず「侵略はやめよう」と強く諭すべきだ。和して同ぜず。それが真の友情だろう。(森岡真一郎)
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