信長(木村拓哉)と濃姫(綾瀬はるか)の政略結婚ラブストーリー。笑えて、グッときます©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会 木村拓哉が織田信長を演じる東映創立70周年記念作品で、放映中のNHK大河ドラマ「どうする家康」の脚本家・古沢(こさわ)良太と、映画「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督がコラボ。2時間48分の長尺は全く感じさせません。
最終回が圧巻やった三谷幸喜・脚本「鎌倉殿の13人」の後を受けた「どうする家康」。最新CG技術を駆使した乗馬シーンがネットで物議をかもしてます。同感。背景の空にも違和感ありました。
まさにこれから〝どうする?〟。「コンフィデンスマンJP」シリーズの脚本でも知られる古沢の手腕に期待です。
さて、そこで嵐・松本潤が徳川家康にふんした大河では、岡田准一が怪演を見せる信長役にキムタクが挑んだ、略して〝ラブジェネ〟。前半でさえまくる〝古沢節〟が、観客を物語の世界へスーッと誘ってくれます。
時は、1549年。敵対してきた尾張と美濃が和議を結んだことで、16歳の〝尾張のうつけ者〟信長は〝美濃のマムシ〟斎藤道三の娘にして、15歳でこれが3度目の婚姻の濃姫と政略結婚することになる。
予告編でも流れてますけど、16歳を演じる50歳のキムタクが実に若々しい。さらには、濃姫役の綾瀬はるかの凛とした美しさったら。
ところがです。単なる美男美女の戦国ラブストーリーでないところが、古沢流。いきなり、初夜が爆笑もんです。
万事〝上から目線〟信長がマウントを取ろうとするんですが、バツ2の〝マムシの娘〟も腕に覚えあり。格闘技に例えれば、常にバックを取られることを許さず、最後はお尻ペンペンからギブアップを奪ってしまう。ドラマ&映画「奥様は、取り扱い注意」でも魅せてましたが、綾瀬って〝動ける〟んですよねぇ。
「戦略結婚で結ばれた夫婦の笑えて泣けるロマンチックコメディーを書いてみたい」と思ってた古沢は、東映から「キムタクで信長を」とオファーされ、「歴史上一番有名な政略結婚カップルで」と快諾したそうな。
最悪の出会いから、互いに認め合うようになる前半は「笑えて」の古沢節が炸裂してます。
そして後半は、初稿で「古沢さんらしい喜劇性の中にギリシャ悲劇のような苛烈なドラマが潜んでいる」と感じた大友監督がタクトを振るう。
エキストラの端々までを演出。〝るろ剣〟みたいなド派手な殺陣こそありませんが、天下統一のために魔王と化していく信長の狂気と葛藤を浮き彫りにしていきます。
キムタク流にいえば、〝ぶっちゃけ〟最終盤で〝ちょ、待てよ!〟とツッコミたくなる場面があることは否定しません。
しかし、クライマックスは、これまで散々描かれてきた信長の「最期」の中でも、個人的にはベストと評しても過言やない壮絶さ。キムタク、やっぱり、散り際もカッコえぇやん!!(笹井弘順)
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