一年の幕開けとなる大相撲初場所も終盤に入った。年2場所制だったときは、初場所は新春そのまま「春場所」といわれた。初日の場所がはねて東京・両国国技館の外へ出るととっぷり日が暮れていたが、千秋楽になるとまだ暮れ切っていない風景に出合う。15日間の日脚の移ろいに「春遠からじ」を実感する。
そんな初場所で珍しいことがあった。国技館名物として知られる「焼き鳥」が初日から販売中止とされたのだ。国技館の地下にある工場で焼かれる焼き鳥は観戦のお供として高い人気を誇り、酒類とともに売店で購入する来場者が多い。それが、肉を串に刺す岩手県内の工場の従業員寮で新型コロナウイルス感染が拡大し、操業できなくなった。
大相撲関連の商品を取り扱う国技館サービスの担当者は「主力商品であり、何とかしたかったが、こればかりはどうしようもない」と落胆したが、3日目から販売が再開された。焼き鳥は国技館が蔵前にあった時代からの名物で60年以上の歴史を持つ。そこから継ぎ足して使われている秘伝のたれが味の決め手という。当時は炭火で焼いていたため、出入口周辺にも煙が立ち込めていたものだ。
江戸時代の相撲小屋を描いた「関取名勝図絵」などいくつかの絵画史料をみると、当時の相撲小屋で販売されていた食品は「弁当」「すし」「酒」「するめ」「かまぼこ」などがあった。
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