――師匠、あけましておめでとうございます。今年も昨年同様よろしくお願い致します。
「おめでとう。何と今年は兎年、6回り目の干支が回って来るまで生きていられるとは思ってもいなかったからな。ありがたいことだ」
――何を言っているんですか、人生100年時代ですよ。まだまだ頑張って下さいよ。
「ああ、ありがとうよ。もう少し頑張ってみますよ。ところで今日はなんなんだ」
――ええ、年も明けていよいよ厳冬期ですよね。この時期になるとワカサギのドーム船の釣りが楽しいじゃないですか。
「おお、最近じゃ、あちらこちらの湖でドーム船が当たり前になったよな。昔は達磨のように着込んで出掛けたものだが、場所によっては防寒着なしでも楽しめるらしいな」
――そうなんですよ。暖房設備がキッチリされていて、防寒着どころかTシャツ1枚でも釣りができる所もあるぐらいです。
「そうなんだってな。俺も仲間に聞いてビックリしたんだが、コーヒーや紅茶、カップラーメンか何かのサービスまであるドーム船もあるんだってな。ずいぶんと変わったものだよな」
――確かにそうですが、一度あの環境でワカサギ釣りをしちゃうと寒風吹きすさぶ湖面にボートを浮かべての釣りはできなくなりますね。
「そうらしいな。昔なら『そんなの釣りじゃねえ~!』と言っているところだが、最近じゃ『それなら行ってみるか』となっちまう自分が情けないよな」
――いいじゃないですか。快適な環境で釣りが楽しめるなら何も文句はないじゃないですか。
「確かにな」
――ほとんどのドーム船では、貸し道具や仕掛けも全て用意されていて手ぶらで行っても楽しめるようです。父も誘って行きませんか。
「ああ、去年、自前の“魚探”も買ったし、一度ドーム船てやつに乗ってみたかった。行ってみるか」
――自前の“魚探”ですか。あれっ、父も買ったと聞きましたが。
「そうだよ。二人で買いに行った」
――えっ、行く気満々じゃないですか。
「そういうこっちゃ。仲間たちは何年も前からドーム船のワカサギ釣りをやっているから情報を仕入れておく。父君の予定を聞いておいてくれ」
――はい。分かりました。
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