二宮和也(左)と松坂桃李の演技合戦も見ごたえあります©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子 シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留されていた実在の日本人捕虜、山本幡男さんの半生を二宮和也が演じます。ラストはもぉ~、ほとんど反則。こんなん、泣かなしゃあない!
映画「Dr.コトー診療所」の16日公開を前に、見てなかったドラマ版を動画配信サービスで追いかけてます。パート1の放送が2003年ですから、吉岡秀隆らキャスト陣が若い。対して年を取った当方は、ほぼほぼ毎回ホロリ。映画版が楽しみです。
さて、そこで、先に見た各社の映画担当から「これは泣く」と聞いてた本作。93年に寺尾聰の主演でドラマ化された実話がもとになってます。
南満州鉄道で働いてた山本幡男は44年に召集され、ロシア語に堪能でハルビン特務機関に配属される。が、ソ連の対日参戦で、妻のモジミ(北川景子)や4人の子どもと離れ離れになり、日本の降伏後はスヴェルドロフスク収容所送りに。
そこでは、足がすくんで戦闘に参加できなかった自分を「卑怯者」と思い込む一等兵の松田(松坂桃李)、軍曹だったことに固執して誰にも高圧的な相沢(桐谷健太)、漁の最中に捕虜となった足の不自由な新谷(中島健人)がいました。
「これは戦後の混乱の年に起こった不幸な出来事に過ぎません。ソ連も早く気づいてくれれば」と仲間を励まし続けた山本は、47年にダモイ(帰国)できることになったけど、なぜか彼らだけが港へ向かう列車から降ろされてしまう。
山本に関して言えば、満鉄で行った3日間の業務がスパイ容疑に相当すると重労働25年の刑に。1日でも早く帰国したい満鉄時代の上司でロシア文学に詳しい原(安田顕)が、ソ連側に山本を〝売った〟んです。
厳冬期は零下40度を超えるシベリアの強制労働収容所で「生きる希望を捨ててはいけません」と言い続け、新谷に文字を教え、ボールを手作りして野球を始めて仲間たちの笑顔を取り戻そうとする山本でしたが、自らは病魔に倒れ…。
原作は講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をW受賞した辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」。山本の遺書はノート15ページ、4500字もあった。その内容だけでも十分泣けます。
ただ、収容所内では日本語を書き残したらスパイ行為とみなされ、抜き打ち検査などで没収されてた。では、どうやって? 妻子への届け方がたまらんのですわ。
とにかく、山本幡男さんの希望と絶望を体現するニノが素晴らしい! こんな姿を目の当たりにしたら、そら、仲間たちも仰天の配達方法を考えて実行しますわ。
実際に遺書をモジミさんへ〝配達〟した人はもっといたらしいですが、映画では前出の4人に絞った。これが、それぞれの境遇と文面がマッチしてて泣かせます。これってネタバレ? いや、知ってても泣けます!!(笹井弘順)
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