東洋大は11月27日、立正大を破り3位となり大学選手権出場を決めた 【ノーサイドの精神】
何だか、居心地がいいのだ。うららかな小春日和の陽気のせいだけではないだろう。埼玉・川越市の北西の端に近い、東洋大のラグビー場。人工芝の上では、初の全国大学選手権を控え、選手たちの練習が続いていた。
過度の緊張感はない。かといって、緩くもない。きびきびした動き。ボールを追う目は鋭い。それでも、練習の合間には笑顔ものぞく。そこにいる全員が、同じ方向を向いているように見える。居心地のよさの源はそんなところにあった、と思う。
そんな思いを就任5年目の福永昇三監督に話したら、「うれしいです。学生たちに伝えます」と喜んでくれた。
東洋大は今季、29年ぶりの1部昇格で開幕戦では5連覇を狙う東海大を破るなど、5勝2敗で3位となった。2部からの昇格チームが昇格年度に大学選手権出場を果たすのは、主要リーグで初の快挙だ。
チームのスローガンは「パラダイス」。強豪集う1部で、自身の成長を感じながらラグビーに全力で取り組むというような意味があるという。パナソニック(現埼玉)で身長190センチのLOとして活躍し、主将も務めた福永監督は「かっこいい男になれ」が口癖。外面ではなく、人間の内面を磨いた「かっこよさ」。気づき。自分がその時点で何をすることがためになるのか。
その一端を、選手たちのインタビューの前に感じた。グラウンド横のベンチに座ってもらい、横並びで話を聞こうとしたら、もう一つのベンチを持ってきて、向かい合わせにしてくれた。そちらの方がもちろん、聞く方も話す方もやりやすい。「誰でもできるだろう」と思うかもしれないが、さも当たり前のように、さりげなく動けるのは、監督の教えが浸透している証だろう。
12月11日、大学選手権初陣の相手は早大。福永監督は「幸せです」と、短い言葉に万感の思いをこめる。監督自身、2011年から2シーズン、明大のFWコーチを務めており、早大戦の〝特別感〟を肌で知っている。ちょうど1年前の12月11日は中大を入れ替え戦で破って1部復帰を決めた日。早大戦の会場は、3カ月前に勝ちどきを上げた東海大戦以来となる秩父宮。「かっこいい男たち」の舞台は整った。(田中浩)
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