日本は6日のクロアチア戦で1―1のままPK戦に突入し、1―3で敗れて史上初の8強入りを逃した。またもや8強入りを逃した日本だが、J1清水の元監督で日本と世界のサッカーに精通するズドラヴコ・ゼムノビッチ氏(68)はサンケイスポーツの取材に応じ、「欧米列強の仲間入りを果たした」と日本の成長に目を見張った。
PK戦で敗退というのは、非常に酷な結果だ。しかし、今回の日本の16強は世界に誇れるものとなった。
ドイツ、スペインというW杯優勝経験チームに勝って1次リーグを突破。決勝トーナメントで当たった相手は前回大会準優勝のクロアチアだった。そのクロアチア相手に延長、PK戦だ。間違いなく、欧米列強諸国の仲間入りしたといっていいだろう。
私はクロアチアのテレビ局の放送で試合を観戦していたが、試合前から解説者たちが日本を警戒していた。「『伊東、三笘、浅野』という突破力ある選手と前線からの守備。速攻は世界一危険なものだ」と分析。選手たちも対戦前に日本の選手たちが「クロアチアに勝つぞ」と意気込んでいたことに対し、「俺たちをなめるな」と本気になっていた。相手を下にみていたらこのような対応はみせない。だが、日本をライバルと認めていたからこそ本気で臨んだ。
伊東純也実際に、クロアチアは日本をかなり分析していた。中盤にはモドリッチらタレントをそろえているが、1次リーグで疲弊していた。日本の守備網に捕まることを懸念し、極力中盤でのパスワークを避けていたという。そして、モドリッチへの対応が厳しくなったときに、迷いなくエースを交代した。クロアチアは総力戦で日本に勝ちにきていた。
日本はPK戦の練習をしてこなかった印象を受けたが、クロアチアは引き分けでのPK戦も想定。入念にPKの練習を行ってきていた。これは日本の実力を認めた証しだ。日本が8強へ一番近づいた大会となった。
日本はいまでは欧州でプレーする選手が大半。海外の選手への苦手意識もなく、リスペクトは持ちつつも、自分たちは戦えるという自信を持っている。より成長できる可能性を秘めている。8強入りの目標は果たせなかったが、恥じることはない。日本サッカーは欧米列強の仲間入りしたのだから。(元J1清水監督)
■ズドラヴコ・ゼムノビッチ(Zdravko Zemunovic) 1954年3月26日生まれ、68歳。ユーゴスラビア(現セルビア)出身。現役時代は国内リーグなどでプレー。引退後はオシム元日本代表監督が当時指揮を執っていたチームの2軍監督などを歴任し、95年に初来日。2000年12月に清水の監督に就任すると同年度の天皇杯準優勝し、翌年度の同大会で優勝を飾る。ゼロックス・スーパーカップも2度制覇。戸田和幸をボランチにコンバートして才能を見いだすなど、日本代表4選手を輩出。千葉県協会テクニカルアドバイザー、VONDS市原(関東1部)監督、J3岐阜、讃岐監督などを歴任し、現在は兵庫・相生学院高を指導。
この記事をシェアする