ラグビーW杯イングランド大会で南アフリカを破るジャイキリ。五郎丸歩(左)とトライに歓喜する日本フィフティーン=2015年9月19日、英ブライトン サッカーのW杯で日本がドイツ、スペインを相次いで撃破した。ジャイアントキリング、サッカー漫画から派生した〝ジャイキリ〟という言葉がSNSなどを中心に飛び交っている。
W杯前までは批判も多かった森保一監督の、勇気あるシステム変更や選手交代が、W杯優勝経験国からの「2勝」につながったことは間違いないだろう。
ところで、ラグビーは実力差がそのまま出る競技だが、それでもたまにジャイキリはある。筆者が選ぶ日本ラグビーの「3大ジャイキリ」は以下の通りだ。
(1)日本代表23-19ジュニア・オールブラックス(1968年6月3日、ニュージーランド・ウェリントン)
(2)日本代表28-24スコットランドXV(1989年5月28日、秩父宮)
(3)日本代表34-32南アフリカ代表(2015年9月19日、英国・ブライトン)
もう半世紀以上も前の(1)。名将・大西鐵之祐監督の「接近・連続・展開」の理論を軸に、2人で並ぶショートラインアウトなど画期的な戦術を取り入れて世界と対抗した。この遠征最大のエピソードが「大地震」。初戦から4連敗した日本の第5戦2日前の夜、現地を大地震が襲った。分宿していた選手の宿の一部が崩壊する被害が出たが、幸い一行は全員無事。怖いもの知らず?となったチームは第5戦で初勝利を挙げて自信を取り戻し、それがジュニア・オールブラックス戦の快挙にもつながったという。
(2)も快挙だった。試合前日、スコットランドはメディアにも見せない非公開練習を行ったが、宿沢広朗監督ら首脳陣は、練習会場の秩父宮ラグビー場の隣に建つ伊藤忠ビルの12階からこっそり偵察。この試合に左PRで出た太田治氏(当時NEC)は「これまでほとんど相手の分析をしてこなかった日本代表で初めて本格的な分析を取り入れ、それに対してどう戦うかを具体的に示したことが大きな成果」といい、エポックメーキングな一戦だったことを明かした。
(3)はまだ記憶に新しい、世界を驚かせたビッグアップセット。南アフリカと一進一退のゲームを繰り広げながら、ノーサイド寸前、WTBヘスケスがインゴール左隅に飛び込んだ瞬間、雄たけびを上げたファンは多かっただろう。
話をサッカーW杯に戻そう。日本時間5日深夜の決勝トーナメント1回戦で、日本の相手はクロアチア。クロアチアには懐かしい思い出がある。1998年フランス大会でW杯初出場を果たした日本の、1次リーグ2戦目の相手がクロアチアだった。当時、筆者はデスクとしてW杯報道に関わっていた。大会前から「こうすれば勝てる」といった、やたらポジティブな紙面を展開していた記憶がある。ボバンやスーケルら、主力選手の名前も忘れていない。
W杯の何たるかもほとんど分からず、手探り状態だったのはメディアもファンも同じだった気がする。あれから24年。チームもファンも成熟した。クロアチアは前回準優勝の強豪だが、森保ジャパンは臆せずに、三たび世界を驚かせてほしい。(田中浩)
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