サッカー・ワールドカップ(W杯)1次リーグE組(1日、日本2-1スペイン)2位で最終節を迎えた日本代表は、スペインに逆転勝利。同組首位で終えた。森保一監督(54)は、2002年日韓大会以来の1次リーグ首位で、決勝トーナメント進出に導いた。
再び〝ドーハの奇跡〟を起こした。森保監督は試合後の円陣で、初戦のドイツ戦に続いてW杯優勝国を破る金星を挙げたイレブンをねぎらった。
「選手たちが1失点のあとも我慢強く戦ってくれた。前半、粘り強く戦ってつなげてくれた選手がいたからこそ、後半いい形で攻撃に移ることができた」
初戦のドイツ戦では後半から使って、逆転劇につなげた3バックをこの日は試合開始から採用。しかし、前半11分に、DFアスピリクエタへのマークが甘くなると、絶妙な浮き球のパスを供給され、それをFWモラタにたたき込まれ先制を許す。その後も技術、連係で優れる無敵艦隊を相手になかなかボールを奪えず、保持率は14%(中立7%、スペイン79%)と苦しい展開が続いた。
しかし、前半は守備から入り、後半勝負と考えていた指揮官にはこれも想定通りだった。ハーフタイムには「プラン通り進んでいる。よく我慢した。後半はよりゴールを狙っていこう」とイレブンを鼓舞。後半開始からMF堂安、MF三笘を投入すると後半3分には堂安が同点弾、同6分には三笘がMF田中のゴールをアシスト。2人は守備でも自陣まで戻って体を張り、大きく貢献した。
1993年のW杯アジア最終予選最終節・イラク戦。勝てば無条件で初のW杯出場が決まるなかでロスタイムの失点で同点とされ、寸前のところで本大会出場を逃した〝ドーハの悲劇〟。日本サッカー史に刻まれた悔しい経験を選手として味わった森保監督は、この日の最終盤にこんな思いを抱いていた。
「最後の1分ぐらいのときに、ドーハの(悲劇の)記憶が出てきました。ちょうどその時に、選手が前向きにボールを奪いに行っていたので、時代は変わった、選手たちは新しい時代のプレーをしてくれているなということを、残り30秒ぐらいのときに思いました」
後半ロスタイムに入ると他会場ではドイツがコスタリカを4-2でリード。同点に追いつかれると総得点数の差でドイツに上回られて、敗退する危機だった。そんななかでも、自陣で守りを固めるだけでなく、前線のFW浅野やMF三笘らは隙があれば前線からボールを奪い、敵陣に運び時間を進ませた。
ドーハの悲劇から29年。因縁の地で森保監督は2度強敵を倒した。「アジア全体にとっても日本のサッカーにとってもドイツ、スペインという世界最高峰のトップグループにいる国に勝てたということは大きな自信につながる」。目標は史上初の8強入り。もう奇跡とは言わせない。
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