12月に入るとサッカーW杯の決勝トーナメントが始まり、寝不足の日が続きそうだ。プロ野球界も今オフは例年と違う。トレードが活発で、日本ハムからフリーエージェント宣言した近藤、メジャー移籍を目指すソフトバンク・千賀、オリックス・吉田正らの去就は未定。9日には現役ドラフトが初開催されるなど、選手もチームも、なかなか落ち着かない。
オフは長いシーズンの疲れを取るためのものと思う人がいるかもしれないが、試合がないというだけで、トレーニングの期間。現役時代は休みなんていらない。けがをしていたら、動かせる部分を鍛えればいい。プロならW杯を見て刺激を受けて、もっと上のレベルを目指すために何が必要なのか考えるはずだ。
私が1984年に広島に入団して数年間は、今と違って一年中、コーチの指導が可能だった。12月も球団主導でトレーニングを行い、1月はキャンプ並みにハードな合同自主トレが待っていた。
唯一の息抜きはイベント出演。面倒くさいと渋る選手もいたが、カープは選手の顔を覚えてもらうため、球団が積極的に出演を後押ししていた。当時はテレビ各局に12球団対抗の運動会、ゴルフ大会など体を使うものから、歌合戦、かくし芸、クイズ大会など専門外のものまで、プロ野球選手が出演する年末年始の番組がたくさんあった。
収録は12月上旬に集中し、1年目のオフは「フィーリングカップル5vs5」にも出演した。「プロポーズ大作戦」という人気番組のコーナーの一つで、男女5人ずつの集団見合いのようなもの。50代以上の人は、よくごらんになった番組の一つではないだろうか。私はカップル不成立だったことだけ、覚えている。
広島のローカル放送では日本サッカーリーグのマツダ(92年からサンフレッチェ広島)の選手とゴルフ、ボウリング、エアホッケーなどで対決。そこで森保一選手(現日本代表監督)と知り合った。楽しかった分、練習もしっかりやった。
12月は自身の成長のために使う大事な1カ月。のんびりしている選手はいないと思うが、ここで差が生まれる。12月に努力する選手が春に笑うのだ。(本紙専属評論家)
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