ゴルフの国内女子ツアーは、21歳の山下美夢有が史上最年少の年間女王に輝いて2022年シーズンの幕を閉じた。今季から女王争い、シード争いは大会ごとの成績と海外メジャーの成績をポイント換算したメルセデスランキングに一本化され、ランキング上位は山下に代表される若手が独占した。そんな若い力に押し出され、急速に勢力が失ったのが韓国勢だ。
今季の優勝はイ・ミニョンの1勝だけに終わった。韓国勢の年間1勝は01年以来、実に21年ぶり。08年の10勝で年間勝利数が初めて2桁となって以降、15年と16年に17勝、18年に15勝するなど圧倒的な強さを誇り、アン・ソンジュ(10、11、14、18年)、イ・ボミ(15、16年)、全美貞(12年)と3人の賞金女王も誕生した。
そんな栄華も今は昔となった大きな原因は、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が19年に改定したトーナメント規約にあるのは明白だろう。この年の改定には大きなポイントがいくつかあるが、海外勢にとって〝事件〟だったのは、下部を含めた翌年からのトーナメント出場資格をJLPGA会員に限定したことだった。会員とはプロテスト合格者のことであり、日本ツアーの入り口はプロテストだけになってしまったのだ。
それまでは、翌年の出場優先順位を決めるQT(予選会)を突破し、TP単年登録してツアーに出るルートがあった。アン・ソンジュ、イ・ボミ、全美貞もこのルート。だが、規約改正でQT経由のTP単年登録は撤廃され、QTも会員しか出られなくなった。プロテストは8月からの1次、10月の2次、そして11月の最終と3段階の長丁場。自国のシーズンと日程が重なることもあり、わざわざプロテストを受けてまで日本でプレーしたいという選手は大幅に減った。
〝鎖国〟とも揶揄(やゆ)された規約改正に、コロナ禍が重なり、変則日程だった昨年6月と11月、そして今年11月の計3度の最終プロテストの韓国勢の合格者はわずかに3人。それまで日本ツアーを席けんしていた選手たちも30歳を過ぎて、かつての勢いはなくなった。
「リコー杯」の翌週の29日には来季の前半戦の出場優先順位を決める最終QTが始まった。メルセデスランク81位でシードが20季連続で止まった李知姫は「少し迷ったけど、シーズン終盤は調子も上がってきたので、もう一回やろうと思った」と現役続行を決意した。ツアー通算23勝の43歳の初優勝は01年の「大王製紙エリエールレディス」。シーズン未勝利に終わりそうだった韓国勢が、最終盤の11月に挙げた初勝利だった。
韓国勢の23年のシードは4人になった。最も若いのはペ・ソンウの28歳で、最年長は全美貞の40歳。復権は正直厳しい。ツアー制度施行前も含めて韓国勢は日本で235勝を挙げている。隣国のライバルのおかげで日本の選手も強くなった。日本の選手が勝つのが当たり前になった女子ツアーだが、日本選手ばかりで盛り上がっていては、そのうち強烈なしっぺ返しが待っているような気がしてならない。(臼杵孝志)
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