■12月1日 老舗酒蔵で起きた密室殺人はかつて花盛りだったテレビの「2時間サスペンスドラマ」を思い出す。県議で多忙な主人を助け切り盛りしていた妻が殺害され、主人には鉄壁のアリバイが…。断崖絶壁で刑事が問い詰めトリックを明かすのがドラマのお約束だったが、事件の舞台は海なしの長野県だ。
殺人の疑いで逮捕されたのは長野県議の丸山大輔容疑者(48)。昨年9月29日未明、塩尻市の酒蔵兼自宅で妻の希美さん(当時47)を殺害したとされる。しかし、丸山容疑者は「前夜から長野市の議員会館にいて現場には行っていない」と容疑を否認しているという。
長野、塩尻間は約60キロ。車での往復は2時間あれば可能とか。警察は防犯カメラや他の車のドライブレコーダーをしらみ潰しに分析し移動する容疑者の車を確認した。相手が県議だけに慎重の上にも慎重を期し、検察も「いける」と判断し逮捕にGoサインを出したのだろう。とはいえ自宅に戻ったとしても殺害に至った物証はなく裁判は難しいのは確かだ。
かつて練炭自殺を装って3人の男性が殺害された連続殺人で、地道に状況証拠を積み重ねた検察は裁判員にこう訴えた。「(例えば)寝る前に星空が見えたが、夜が明け一面雪化粧であれば降るのを見てなくても雪が降ったと認定できる。誰かがトラックで雪をばらまく必要もない。社会常識に照らして合理的かどうか判断してほしい」。判決は死刑。今回この〝雪の理論〟が通じるのか。
丸山容疑者は自民党所属の2期目で評判は悪くはなかったらしいが。事件後テレビのインタビューでは妻を殺害された怒りや悔しさもなく妙に淡々と答えていた。演技力はありそうでなかったようだ。(今村忠)
この記事をシェアする