12月9日に初の試みとなる現役ドラフトが実施される。出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させるための制度で、2017年からプロ野球選手会と日本野球機構(NPB)が模索を続けてきた。
同制度は12月2日に公示される保留者名簿の中から、球団がドラフト対象となる2選手をリストアップしNPBに提出。リストから全球団が1人は獲得し、1人は取られるルールが設定された。
前例のない取り組みだけに選手会の森仁事務局長は、問題点があれば改善して来年以降につなげる考えを示している。各球団が、もっとも頭を悩ますのが対象選手のリストアップだろう。選手会側は一定の年数や登録日数などで自動的に選ばれることを主張したが、今回は球団側が任意で選ぶことでまとまった。
ある球団の幹部は「保留者名簿には来季の戦力として考えている選手が載っている。そこから2人を取られるとなったら非常に厳しい。だとしたら戦力外として考えていた2人を残しておく必要がある」と語った。そして、そのうちの1人が〝残留〟する可能性も指摘していた。
事前に選手にリスト入りの希望を聞くことを検討していた球団もあるという。ただ、希望してもドラフトで指名されずに、移籍が実現しなかった場合に「お前は出ていきたかったのか」となり、立場が弱くなってしまう恐れもある。だからこそ森事務局長はリスト入りした選手について「(事前に)漏れないようにやってほしい」と心情を推しはかった。
「選手にとっても、球団にとっても〝ウィン・ウィン〟になるならいいけど、果たしてそうなるのかなとは思います」
夏頃に、こう語っていたのは楽天の編成を統括するゼネラルマネジャー(GM)も兼任する石井監督だ。「自分のところでなかなかプレーする環境ではない選手が、果たして他にいってプレーできる環境があるのかというところだと思う。実力不足だったら、どの球団でもプレーする機会はないんですよ」と厳しい見解も示した。
現役ドラフトは12月9日午後1時にスタートする。全球団の指名が終わり、当該選手に通達された後に移籍する選手が一斉に発表される。「結果を見てみないと」と森事務局長。どんなドラマが生まれるのか注目だ。(湯浅大)
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