日本はW杯カタール大会1次リーグ第2戦、27日のコスタリカ戦に0―1で惜敗。歴史的逆転劇を演じた初戦ドイツ戦から一転し、決勝トーナメント進出へ黄色信号が灯った。J1清水の元監督で日本と世界のサッカーに精通するズドラヴコ・ゼムノビッチ氏(68)はサンケイスポーツの取材に応じ、12月1日(日本時間2日)のスペイン戦へ「精神面の立て直し」を一番にすべきと説いた。
日本が勝つと世界中の人が思っていただろう。初戦ドイツ戦の「歓喜」からこのコスタリカ戦の「落胆」。相手はお世辞にも高いレベルのチームではなかっただけに、本当に残念な結果となった。
前半から動きがなかった。暑かったし、ドイツ戦からの疲労があったかもしれない。それでも攻めの姿勢を見せないといけなかった。「この試合で決める」くらいで、ベストメンバーでいくべきだったし、実際のプレーでも前線から積極的にプレスを仕掛け、試合の主導権を握るべきだった。なぜ積極性を欠いたのか疑問だ。
後半はドイツ戦同様に早めに交代策を講じた。しかし、コスタリカが予想に反して引いているのに、敵陣のスペースがない中で浅野を起用。彼は相手守備の背後に走り込む能力に定評があるのに、あのような状況で投入したのか。ここが分からない。
三笘薫左サイドには三笘が入り、ここを攻撃の起点とすべきだったが、なかなか彼を生かせず。同サイドのDF伊藤は三笘になかなかパスを出さなかったし、ほかの選手もバックパスが多かった。監督は三笘を使うことを再度指示しないといけないし、選手たちも徹底しなければいけなかった。「引き分けでもいい」という積極性を欠く思いがあったのかもしれない。負けるべくして負けた試合となった。これで試合前は95パーセントあった決勝トーナメント進出の可能性も5パーセントと厳しいものとなった。
今は切り替えないといけない。監督、選手、スタッフは個人個人、チーム全体でしっかりと話し合って、スペイン戦に臨まないといけない。私が森保監督の立場なら、ドイツ戦のよかった場面5分ほどをハイライトにし、動画で選手にみせる。あのときのいい印象を思い出させ、勇気を再び持つことを選手にさせる。戦術の確認よりもそこを優先させる。人間の行動はすべては「思考」することから始まるのだから。
モチベーションを再び上げてスペイン戦へ。我慢する試合になるだろうが、しっかりと耐えて少ないチャンスをものにする。選手たちはしっかりと「自分ができること」を全うして、勝ちに結びつけてほしい。(元J1清水監督)
▼ズドラヴコ・ゼムノビッチ(Zdravko Zemunovic) 1954年3月26日生まれ、68歳。ユーゴスラビア(現セルビア)出身。現役時代は国内リーグなどでプレー。引退後はオシム元日本代表監督が当時指揮を執っていたチームの2軍監督などを歴任し、95年に初来日。2000年12月に清水の監督に就任すると同年度の天皇杯準優勝し、翌年度の同大会で優勝を飾る。ゼロックス・スーパーカップも2度制覇。戸田和幸をボランチにコンバートして才能を見いだすなど、日本代表4選手を輩出。千葉県協会テクニカルアドバイザー、VONDS市原(関東1部)監督、J3岐阜、讃岐監督などを歴任し、現在は兵庫・相生学院高を指導。
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