日本ハムとのプレーオフ第2戦でサヨナラ負けし、仲間に抱きかかえられながら、ベンチへ戻るソフトバンク・斉藤和巳投手(中央)=2006年10月12日 ソフトバンクは18日、宮崎生目の杜運動公園での秋季キャンプを打ち上げた。充実の秋を過ごす中で、新しい風を吹き込んだのが斉藤和巳投手コーチ(44)だった。
2022年、シーズンは76勝65敗2分け。オリックスと同数も、直接対決で10勝15敗と負け越して2位に終わった。ソフトバンクのチーム与四球「474」は12球団トップ。オリックスの同「375」とは99個差で、藤本監督も「厳しさ」「制球力の改善」の2つを筆頭に、斉藤投手コーチに改革を期待している。
秋季キャンプを打ち上げた日、斉藤コーチはテレビインタビューで、来季の意気込みを問われてはっきりと言った。
「やるからには勝たないとおもしろくないですから。最後にはみんなで笑って終わりたい。うれし泣きができるくらい」
通算79勝23敗、通算勝率・775は異次元ともいえる数字だ。2000投球回以上の投手で通算勝率1位は、巨人などで活躍した藤本英雄の・697(200勝87敗)。斉藤投手コーチは通算949回⅔ではあるが「負けないエース」と呼ばれてきた。そんな男が言った「勝たないとおもしろくない」。言葉以上の重みが伝わってきた。
そしてもう一つ。「勝たないと」と魂に刻み込まれたのが〝あのシーン〟だろう。2006年10月12日、日本ハムとのプレーオフ(札幌ドーム)。0-1xで九回にサヨナラ負けを喫し、マウンドで片膝をついて涙した。同年は最多勝(18勝)、最多奪三振(205三振)、最優秀防御率(1・75)、最高勝率(・783)と投手4冠に輝いたが、最後の最後で勝ち切ることができなかった。勝者と敗者が強烈なコントラストを描いたシーンは、今でも語り継がれている。「1勝」の重みを誰よりも知っている男が、投手コーチとして帰ってきた。
斉藤コーチは就任会見で「少しでもホークスに恩返しができたら」と言った。味わった栄光も、あの日流した涙も、後輩を育てる力に変えていく。(竹村岳)
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