「歌の才能は与えられたものですが、そのギフトを聴いてくれる方に渡すには、常に、常に訓練しなければならない。しかも歌には魂を削って思いを込めなくてはいけない。その中で、私は何をやっているのだろう…楽しく幸せな人生を送る人もいるのに…と思ってしまう」と告白した。
東京を一望できるホテルで取材に応じたサラ。秋晴れの風景に「Beautiful」と感激し、日本の四季を堪能していた=東京都内
一方、「犠牲以上に得られる喜びが原動力」と熱弁。今年は米ハリウッドの観光名所、ウォーク・オブ・フェイムにサラの功績をたたえて星型プレートが設置された。これは〝ハリウッドの殿堂入り〟とされる栄誉で、今年はアヴリル・ラヴィーン(38)らも殿堂入り。サラは「ひとつのレガシー(継承される遺産)を残せたことはうれしい」と大きな励みにしている。
スポーツとのつながりも強く、サッカーW杯では「クエスチョン・オブ・オナー」が02年日韓大会のテレビ朝日系関連曲に選ばれた。20年たった今でも人々を鼓舞しており、「この曲は世界のスポーツ観戦で愛されている」と感謝した。1992年のバルセロナ、2008年の北京五輪の開会式では公式テーマ曲を歌唱。「人類がひとつのことを成し遂げる素晴らしさを感じた」と平和の祭典に共感した。
世界の歌姫として今後のビジョンについて質問すると、スポーツになぞらえ、「選手も私も肉体的なハードワークは必要。ただそれは一生できないからこそ、凝縮した時間で表現を追求しなければ」と自覚。「歌うこと以外でも曲作りやショーのプロデュースなど、前に進みながら音楽に関わりたい」と万人を優しく包む美声を磨きながら、しなやかに自由にアーティスト人生を歩んでいく。
◆イングランドを応援 サラはサッカーW杯カタール大会について「Exciting!(興奮しています)」と熱戦を楽しんでいる様子。優勝候補の地元・イングランドに対しては「チームがベストではないときでも応援します」と熱狂的だ。日本とイングランドの共通点を質問すると、「Very tough(タフ)。どちらも島国で、国民もチームもとてもタフだ」とエールを送った。自身のスポーツ歴については「英国の女子は乗馬やスキーを習うけど、私はバレエだった。スポーツはあまり得意ではない」とお茶目にほほえんだ。
■サラ・ブライトマン 1960年8月14日生まれ、62歳。英国出身。76年に音楽活動を開始し、86年のミュージカル「オペラ座の怪人」に出演して世界的に注目を集める。91年にNHK紅白歌合戦に初出場。2009年の映画「アマルフィ 女神の報酬」で大ヒット曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が主題歌に起用され、自身も映画出演。12年には人道支援活動などが評価され、ユネスコ平和芸術家に任命された。
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