大相撲九州場所14日目(26日、福岡国際センター)大関貴景勝(26)は平幕王鵬(22)を押し出して3敗を堅持した。初優勝を目指す平幕高安(32)は輝(28)をはたき込み、12勝2敗で単独トップを守った。3敗対決は平幕阿炎(28)が関脇豊昇龍(23)を引き落とし、優勝争いはこの3人に絞られた。千秋楽では高安と阿炎が対戦。高安が勝てば、その時点で優勝が決まる。阿炎が勝ち、貴景勝も勝てば3人による巴戦となる。
役者が違う。風格でたじろがせる。大関貴景勝が、優勝争いに絡む平幕王鵬を押し出して3敗を死守。逆転優勝の可能性を残して、千秋楽を迎える。
「いつもどおり。勝負になったら関係ない」
王鵬は埼玉栄高相撲部の3学年後輩。所属する部屋は違うが、同じ二所ノ関一門。令和元年夏場所から約1年半、付け人も務め、今回が初顔合わせ。突き起こして、いなして相手の体勢を崩し、下から下から押し上げた。
5日目の取組(逸ノ城戦)から、貴景勝の背中に赤黒い「○」のかたちがみえるようになった。いわゆる「吸玉(すいだま)」「カッピング」といわれる療法の跡だ。背中などへ真空状態にしたガラスのカップを吸着させ、毛細血管に滞る血行の促進、筋肉痛の改善などが見込めるという。その跡は日を追うごとに多くなり、いまでは背中一面に残っている。
「力士規定」には「力士は体を清潔に保たなければならない。伸びた爪や、刺青(いれずみ)、過度な髭(ひげ)などは禁止」としている。もちろん、体のケアの痕跡に問題はない。だが、長年力士に吸玉療法を施している60代のトレーナーは「画面に大きく映ってしまう本場所中にはあまり使えないのが現状。使っても吸引圧をかなり抑える」と、見た目に気を使うという。それでも、体調を保つため、貴景勝は見栄えなどにこだわっていられないのだろう。
千秋楽では1差で平幕高安を追う。3日目の直接対戦で敗れ、自力で賜杯を抱くことはできない。「(千秋楽へ向け)この14日間同様にしっかり準備をする。場所中はそれしかできないので」。最後まで、人事は尽くす。(奥村展也)
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