逆転勝利した日本代表と喜ぶサポーター=ハリファ国際競技場 ■11月26日 熱戦が繰り広げられているサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会を見ていると、別世界に迷い込んだかのような錯覚に陥る。日本が強豪ドイツを破る大金星を挙げたことではない。観客がマスクなしで大騒ぎしているからだ。
産経新聞は「コロナ禍観客制限なし 埋まる会場 高まるリスク」の見出しで現地リポートを掲載(22日付)。観戦中のマスク着用義務はなく、9割以上がノーマスク姿。開幕戦では、カタールに勝ったエクアドルのサポーターが「試合終了後も周辺にとどまり、太鼓をたたきながら肩を組んだり、応援歌を合唱したりして大騒ぎしていた」という。
着用義務がないのだからノーマスクは当たり前。歓声も上げ放題。ルールを無視して満員の球場で応援歌を歌う一部野球ファンには夢のような話だろうが、同調圧力がはびこる日本で実現させるのはまだ先だろう。国がいくら「屋外ではマスクの着用は原則不要」とアナウンスしても、国民の多くはマスク着用で外を歩いているのだから。
先の記事で最も懸念したのは「マスギャザリング」。厚労省が緊急承認したコロナ薬を開発した塩野義製薬のホームページによると「一定期間、限定された地域に、同じ目的で多くの人が集まること」で、「限られた空間で大人数が密に接するため、感染症が広がりやすい」とある。
無観客の東京五輪ですら、期間中に日本で独自に進化した新型コロナウイルスの一種が海外に広まったという。さまざまな国から多数が集まるのに観客のコロナ対策が緩い今回のW杯なら…。スタンドのごみを持ち帰って称賛される日本人サポーターが、新たな変異株を持ち帰るのだけは勘弁してほしい。(鈴木学)
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