試合後、スタンドの声援に応える長友佑都(中央左)、南野拓実(同右)=ハリファ国際競技場(撮影・蔵賢斗) サッカー・ワールドカップ(W杯)1次リーグE組(23日、ドイツ1-2日本、ドーハ) 国際サッカー連盟(FIFA)ランキング24位の日本は、同11位で優勝4度の強豪ドイツに勝利。4大会連続出場のDF長友佑都(36)=FC東京=は左サイドバックで先発。この試合でW杯通算12試合目の出場となり日本最多出場となった。
J1のFC東京でクラブコミュニケーターを務める元日本代表MFの石川直宏さん(41)は、強豪を相手に1失点で勝利に貢献した5歳下の後輩、長友についてこう語る。
「彼は自分の身に起こることはすべて力になるというマインドです」
最初の出会いから鮮烈だった。2007年5月。当時、明大3年の長友は強化指定選手としてFC東京の練習に参加。プロ選手に臆せず指示を出し、紅白戦でブラジル人FWを完封。さらに2得点した。「なんだこいつは」。チームの主力だった石川さんは目を見張った。
その後、インテル・ミラノ(イタリア)など海外クラブで11シーズン活躍。海外移籍後は連絡を取る回数も減っていたが昨年9月ごろ、長友が古巣復帰を考えているという情報が入った石川さんはメッセージを送った。「佑都の経験も含めて、今のクラブには絶対に必要だと思った」。復帰を決断した長友からは「シャーレを掲げましょう」と、返事が返ってきた。
昨年9月に古巣へ復帰。持ち前の明るさで、チームの雰囲気をがらりと変えた。今季は右サイドバックにも挑戦。アルベル監督の下で、サイドに張るプレーだけではなく、内側に入っていくプレーにも取り組むなど、まだまだ成長への意欲は衰えない。
そんな長友が、6月22日の天皇杯・長崎戦の試合前に珍しく弱音を吐いた。
「直さん、正直しんどいです」
鳴り物入りで戻ってきた自分にかかるプレッシャー。黒星が先行したW杯アジア最終予選では批判の的になった。年齢による体の変化で、全盛期のようなプレーは見せられない。「批判はガソリン」などと強がっていたものの、「精神的、体力的なところもあったんだと思う」と石川さんは思いやる。
それでも、2言目には前を向いていた。「ここからまた自分がどう高いパフォーマンスを出せるかハードルを作って、それを乗り越えていく。そんなことを言っていた。スゲーなこいつはと思いました」。4大会連続のW杯出場を成し遂げられたパワーの源泉は、この前向きさにある。(山下幸志朗)
この記事をシェアする