歌舞伎座の安孫子正社長(74)は今年9月、吉右衛門さんの追善公演「秀山祭九月大歌舞伎」で劇中口上をのべた兄、松本白鸚(80)に触れ、「吉右衛門さんのことを褒めていらした。ご兄弟でありながら高麗屋、播磨屋としてライバルとして競い合って、切磋琢磨してこられました。そこには2人にしか分からないことがあった。その口上に涙を禁じ得ませんでした」と思いをはせた。19日から歌舞伎座公演を休演中の白鸚は偲ぶ会を欠席した。
喪主を務めた吉右衛門の妻、知佐さんは、故人が昨年9月に孫、尾上丑之助(8)と共演予定だった「盛綱陣屋」に出演できなかった無念を思いやり、『丑之助には自分で稽古をするから』と準備をしておりましたので、心残りだったかと存じます」と述懐。「じいたんと慕ってくれた孫たちの絵や手紙に囲まれて旅立ったことをご報告申し上げます」などと気丈に語った。菊之助に連れられ、丑之助ら孫3人も祖父を追悼していた。
生前の写真が展示された部屋=東京・港区(撮影・長尾みなみ)★貴重な写真 会場には「仮名手本忠臣蔵」や「河内山」など吉右衛門さんの当たり役を写真家、鍋島徳恭さんが撮影した約30点のカットも展示された。「義経千本桜 渡海屋・大物浦」で、故人演じる平知盛がいかりを持ち海に飛び込む場面を裏から撮影した貴重な写真も。知佐さんは「私たちは決して見ることができない」と感激した。また、献花時には菊之助と共演した時代劇ドラマ「鬼平犯科帳」の名場面も収録された約30分の映像が流された。
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