笑いの殿堂・なんばグランド花月(NGK)で365日上演される吉本新喜劇。つい最近、取材終わりに稽古の第一段階である「本読み」を見たのだが、衝撃の光景があった。それは「超高速本読み」である。大げさではなく2倍速で、しかもギャグの息もピッタリだ。もし私が入ったら「すみません、今どこですか?」と台本のどの部分を読んでいるか見失っていたに違いない。
新喜劇ができるまでの舞台裏をこのコラムで書かせて頂けたらおもしろい!と思い、吉本興業にアポを取ってみる。取材は快諾だったのだが、メールの文面には「本読み・立ち稽古 11月14日(月)23時~」「舞台稽古 24時30分~」と書かれていた。新喜劇は火曜初日で千秋楽が月曜の1週間公演が基本。な、な、なんと、前日の午後11時に稽古を始め、翌日の午前11時公演(新喜劇は12時30分~)に間に合わせるというのだ。毎回コメディーであり、定番のギャグがある芝居とはいえ、800人規模の劇場で1週間公演となれば、30日前から稽古が始まってもおかしくはない。
今回は川畑泰史(55)の座長週。稽古前に新喜劇ができるまでを根掘り葉掘り聞いた。まず本読みについては「せっかちなんで僕は特に速いという噂ですね。そもそも本読みいらん説もあるんですよ。家で読んで来いよと。でも、ベテランは本読みをササッとやっても、どの程度できるか、こっちも分かっていますが、若手は流してその言い方なのか、本気でそうなのか分からへんので、しっかり読んでくれと言いますね」と持論を展開。
稽古自体は前日深夜から始まるが、座長としては2カ月前から動き出していた。作家から5~10行程度のあらすじを募集。この際、誰が書いたかわからないようにフォントもそろえて、20~30案の中からスタッフと厳選。NGK公演に限っては放送局であるMBSの意向も取り入れる。1カ月前にキャストが決定し、本格的に台本が書き始められる。そして、台本が配られたのが、土曜日。「まだ早い方やね」と平然と言った川畑。今回の公演に加え、今後の新喜劇3公演を並行して打ち合わせをしているという。こうした過程を踏んで、初日前日の深夜、目を真っ赤にした座員が集まり、稽古が始まった。
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