〝ミスター赤ヘル〟山本浩二氏の監督時代を知る最後の選手がユニホームを脱いだ。11月4日のマツダスタジアム。広島を戦力外となった白浜裕太氏(37)が現役引退すると明かした。
「現役はもうしないです。引退です。まだできますけど、カープ以外で考えていない。ここで終わったら終わり」
10月22日に戦力外通告を受けた直後は「何も考えていない」と言葉を選んだが、正式に現役を退く意向を示した。球団幹部は人間性を評価しており、ポストを打診している。
広島・広陵高3年春に全国制覇し、翌2004年にドラフト1位で広島入り。出場機会に恵まれず通算90試合出場にとどまったものの、球団の生え抜き捕手では最長の石原慶幸(02-20年、来季バッテリーコーチ)に並び19年在籍。毎オフ契約を更新する度に話題となったが、捕球や送球などの技術が高くチームでは貴重な存在だった。
近年は2軍でも出場機会が少なかったが、前向きに練習に励み、同僚をサポートする姿は共感を呼び、人気は全国へと広がった。今季は2試合の先発出場を含む4試合に出場。代打で2年ぶりの1軍出場した7月23日のヤクルト戦(神宮)では両軍のファンによる拍手で沸いた。
「引退試合のような大きな拍手で素直にうれしかった」
戦力外発表の前には広陵高野球部の中井哲之監督(60)に電話で引退を報告した。普段「プロ野球選手だからといって勘違いをするなよ」と辛口な中井監督が「ここまで野球ができたのはお前の生き方や接し方のおかげ。堂々と胸を張れ」。ナカイ流のねぎらいの言葉に胸が熱くなった。
「去り際は大事。正直な気持ちはあるが、もがいても、さみしい顔をしても仕方がない」
戦力外通告を受けた直後の会見では球団のスタッフを含め全員に感謝を述べた白浜。毎年が勝負のプロの世界。「赤ヘルひと筋19年」の堂々たる数字を残して現役生活に幕を下ろした。(柏村翔)
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