千賀の「お化けフォーク」、甲斐の「甲斐キャノン」。この愛称は野球ファンならよく知っているだろう。では「ジョーカー」は? 2人と育成で同期入団である牧原大成内野手(30)だ。
ソフトバンクは15日、オリックスとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージに敗れて今季が終戦。海外FA権を保有している千賀滉大投手(29)は「行使は絶対にします」と明言した。正式発表はまだだが、米大リーグに挑戦すると宣言した。
しばらくして25日、甲斐が代表取材に応じた。2011年育成4位で入団した千賀と、同6位だった甲斐。「決めるのは千賀。友達として背中を押してあげたいです。そういう(夢に挑戦する)姿も見てみたい」とエールを送った。ずっと一緒にバッテリーを組んできた千賀の決断だから、心から尊重すると決めていた。
そして11年、育成5位だったのが牧原大成だ。千賀、甲斐と同級生&同期入団で、今季はキャリアハイの120試合に出場。規定打席にはわずかに届かなかったが打率・301、6本塁打、42打点を記録した。二遊間に加えて外野も守るユーティリティー性は藤本監督に「ジョーカー」と表現され「レギュラーよりもしんどい」と、なくてはならない存在として今季のホークスを支えた。
ドラフト会議があった10月20日。牧原大は自身のツイッターを更新し、心境を語った。
「ドラフト等のニュースで『千賀、甲斐に続き』という区切りに牧原の名前が無いのは悔しい。頑張ろう! 俺」
ドラフトの順位でいえば千賀、牧原大、甲斐の順。だが千賀、甲斐は昨年の東京五輪にも選出され、バッテリーでもあるだけに、どうしても「コンビ」のように見られてきた。2人の活躍に「嫉妬したこともある」というが、今年の活躍を見れば「コンビ」ではなく「トリオ」で見てほしいと思うようになったファンも多いはずだ。
9月25日のロッテ戦(ペイペイドーム)では6回無失点の千賀、1号3ランを放った甲斐がお立ち台に選ばれた。適時打を放った牧原大も記念撮影時に登場し、スリーショットが実現した。「一番の夢だった」という景色を、一生忘れることはない。千賀のインスタグラムのアイコンも、この日のスリーショット。他の誰よりも、この3人が一緒に並び立つ景色を夢見てきた。
3年やって一流と言われる世界。今季の活躍で「肩を並べた」とまで言うと、一番納得しないのは牧原大かもしれない。千賀の米大リーグ挑戦が実現すれば、次のスリーショットはきっと数年後。そのときにはもっと胸を張って、肩を並べる。そしてそれまでも、これからも、3人はずっとずっと友達だ。(竹村岳)
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