日本一を決める戦いが、今年も始まる。10月22日に幕を開ける日本シリーズ。ヤクルト―オリックスと2年連続同じ顔合わせとなった。
球団初となる2年連続日本一を目指すヤクルトにとっては、何が鍵となるのか。もちろん4番・村上の打棒や周りを固める打者の活躍、先発、救援ともに投手陣の奮闘は欠かせないだろう。その中で記者は、山田の守備に注目したい。
「山田哲人」と聞けば、どういうイメージを浮かべるだろうか。ほとんどの人は、史上初となる3度のトリプルスリー(同一シーズン打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成した「ミスター・トリプルスリー」として認知しているはずだ。長打力だけでなく、走る技術も超一流。山田が「打」で勝利に貢献してきた試合は数知れない。
ただ、山田は「守」も超一流だ。打撃のイメージが強いが「もともと守備へのこだわりや思いは強い。守備でももっと貢献したい」と走攻守の中でも高い意識を持つ。今季の目標の一つに「ゴールデングラブ賞受賞」を掲げ、開幕前には「今年は特に魅せるプレーもしたい」と意気込んでいた。
レギュラーシーズン終盤に、山田の好守がチームを救った。2位・DeNAに4ゲーム差に迫られた8月26日の直接対決では、3点リードの八回1死で桑原の中前へ抜けそうな、難しいバウンドの打球を滑りながら好捕。リプレー検証が行われたが、判定は覆らなかった。もし抜けていれば、相手に流れを渡す可能性もあっただけに大きなワンプレーとなった。
さらに、ポストシーズンでも守備力の高さを見せつけた。10月12日のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ初戦(対阪神、神宮)。七回無死一塁で、原口の強烈な三ゴロを村上が好捕し二塁へ送球。これがワンバウンドしてしまったが、山田が体勢を崩されながらも見事に捕球した。6点差とリードを広げた直後だっただけに、もし、セーフになっていたら…。勝利に導くプレーだったことは間違いない。
山田の守備を支えているのが、ドナイヤ社製のグラブだ。2013年シーズンから愛用しているいわば〝相棒〟で、「初めてはめたときに『違うな』って思った。革もしっかりしているし、吸いつきがいい。何より自分の手とのフィット感がすごかった」と守備に深い興味を示すきっかけになった。
だからこそ、毎日のケアは欠かさない。本拠地・神宮球場に来てまず行うのがグラブの手入れだ。全体の汚れを落とし、捕球面だけにワックスを塗る。用具への愛着と感謝の思いが、ここぞの場面での好プレーを生んでいるのだ。
数々の打撃タイトルを獲得してきた山田にとって、ゴールデングラブ賞受賞は悲願でもある。今季は幾度となく、そこに言及してきた。今季は130試合に出場し(守備に就いたのは120試合)、失策はわずか「3」。守備率・995は二塁手のリーグトップタイの数字だ。同率で並ぶ広島・菊池涼が9年連続でそのタイトルを保持してきたが、山田の守備は決して劣ってはいない。堅実かつ華麗で、リーグ連覇に貢献したことを考えれば、初受賞となっても誰も驚かないだろう。
まずは、日本一を懸けた目の前の一戦に集中する。そこでも、山田の好守には期待がかかる。そして、年末には金色のグラブを持った山田の姿を多くのファンが待っている。(赤尾裕希)