裏付けというよりも、感情論で書いてしまう、記者としては恥ずかしい内容かもしれない。でも、書きたい。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(34)がキャプテンでよかった、と。
15日、ソフトバンクは京セラでオリックスにサヨナラ負け。クライマックスシリーズの敗退が決まり、今季の戦いが終わった。チームは世代交代を目指す一方で、柳田にとってはキャプテンとしての1年目。「そこも力不足な感じはしました。そこはちょっと…」と、少しの沈黙の後に「そういう器じゃなかったかなと感じております」と続けた。
シーズン成績は117試合に出場して打率・275、24本塁打、79打点。8月下旬にはコロナ離脱もあった。球界を代表するスラッガーであるがゆえに、これまでの数字と比較すれば、物足りなさは本人が一番感じていると思う。ただ、それ以上に、過去とはまた違った、柳田悠岐の存在を頼もしく思ったシーズンだった。
優勝へのマジック「1」で迎えた2日のロッテ戦(ZOZOマリン)。結果によってはオリックスに逆転Vを許してしまう状況で、試合前に声出しを務めたのは柳田だった。「ダメやったら、全部俺のせい。そのときは責任取って…」と胸のCマークを握ると「こんなん、破り捨てる!」と言い切った。もちろん、ナインは爆笑。キャプテンとしてチームを鼓舞して、全てを背負った。
「全部、俺のせいにしろ! 死ぬ気でいくぞ!」
全力で戦った末にオリックスに優勝をさらわれたが、1日の西武戦(べルーナ)、2日のロッテ戦と2試合連発。歴史に残る大混戦の中で、柳田の存在感は別格だった。西武とのCSファーストステージでも2試合連発で、チームは連勝突破。ここで打ってほしいと頼りたいときほど、結果で応えてくれた。
これまでの柳田は、どちらかといえばのびのびとプレーして、それに周りの選手がついていくイメージだったが、今年はとりまく状況も大きく変わった。ここ数年で多くのベテランがホークスを去った。9月8日には熱男と呼ばれたチームリーダーの松田が登録抹消。柳田、今宮、中村晃に「今度はお前たちが引っ張っていく番だ」とバトンを託し、退団した。
前述した声出しについて柳田は「思ったことを言っただけですよ」と話したが、背中で、そして言葉でチームを引っ張った。終盤戦でみせた存在感も含め、ホークスの伝統を背負ってきた先輩たちに、柳田がぐっと近づいたシーズンだったと思う。それぐらい、柳田の全てが頼もしかった。
「そういう器じゃなかったのかな」という言葉の真意は、もう少し踏み込んで聞いてみないとわからない。ただ、それが自責の念からきているものだとしたら、全力で否定したい。2022年。柳田悠岐がキャプテンで、本当によかった。(竹村岳)
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