攻守に分かれた試合形式の練習を行い、攻撃の際の戦術を学ぶ岐阜大(左側)、神戸大の両医学部ラグビー部員 【ノーサイドの精神】
9月下旬、兵庫県内で医学部ラグビー部員を対象にしたラグビー教室が開催された。
西日本の大学の医学部ラガーの集大成の大会であり、8月に兵庫・神鍋高原で開催予定だった西日本医科学生総合体育大会がコロナ禍で3年連続で中止になったことを受け、元大体大ヘッドコーチでオーストラリアコーチング資格レベル2を持つ井上正幸氏(47)と7人制日本代表経験がある林大成(30)が企画した。
当日は複数の大学が参加。2人による戦術やステップなどの技術指導を熱心に聞き入った。その姿は一般のラグビー部員と変わらない。
実戦形式の練習中、コーチ役の井上正幸氏(中央奥)とプレーについて話し合う岐阜大医学部ラグビー部員=兵庫県内とはいえ、彼らの最大の目標は医師になることだ。学生生活は当然、授業が優先となる。4年生以降は病院での実習なども加わり、6年生は医師国家試験にも備えなければならない。カリキュラムの違いから、多くが医学部以外(本学)と医学部の2つのラグビー部が分かれて活動している(規則上、医学部生の本学ラグビー部への加入は可能。2018年度の慶大主将を医学部のSO古田京が務めた例もある)。
話を聞いた岐阜大、神戸大の医学部ラグビー部の練習はいずれも週3回。学年が上がるにつれ、練習への参加が困難になるため、4年生が主将を務めている。
今夏、神戸大の新主将に就任したSH大場絢心(けんしん、24)は中学3年のとき、身内の手術をきっかけに医師を志した。だが、学業面などから一度はその道をあきらめ、神戸大理学部に入学。どこかやりきれない日々を過ごしていたという。
そんな2年生の夏、母校の京都・堀川高時代にかわいがってくれた陸上部の1学年上の山口雄也さんを病室に見舞った。
京大工学部1年時に数十万人にひとりという希少がんと診断された山口さんは闘病の様子や生きることへの思いなどをブログやSNSで発信し、それをまとめた「『がんになって良かった』と言いたい」(徳間書店)を出版。その奮闘はNHKのドキュメンタリー「ひとモノガタリ」でも放送され、反響を呼んだ。2021年6月、23歳の若さで亡くなっている。