苦しい日々の中、改めて感じたのは仲間の大切さでした。自分の本塁打で勝つことがあります。勝利に導くのが4番の仕事。でも、決して一人の力だけでは勝てない。それが、野球。監督やコーチ、スタメンの9人、ベンチで声を出す人、ここぞの場面で試合に出ていく人、支えてくれる裏方さん。みんながいて初めて勝てる。勝利は仲間と一緒につかむものだと気づかされました。
だから、哲さんの涙は絶対に忘れません。6連敗となった8月11日の広島戦後、選手だけでマツダスタジアムのブルペンに集まりました。選手の輪の前で哲さんが目に涙をためて「助けてください」と頭を下げました。あんな表情で、あんなことを言う姿は初めて見ました。
当時の哲さんはたしかに調子が良くなかった。でも、全員の前で頭を下げるのは簡単なことではありません。いろんな感情が巡りました。僕だって打てない時がある。どんな時も主将としてチームの中心で責任を背負う哲さんの存在は本当に偉大です。
僕だって助けてほしいときがある。「哲さん、助けてよ」。心から叫びたいときが絶対に来る。だから「哲さん、そのときは頼みますよ」と心の中でつぶやきました。口にはしません。言わずとも気持ちは伝わっているはずだから。助けたいし、助けてほしい。心からそう思いあえるこのチームで絶対に優勝したい。哲さんの涙で「チームスワローズ」が一致団結したと思います。
野球を始めた頃から、プロ野球選手になることを疑わずに突っ走ってきました。夢に見た舞台に立ち、今度は夢を与える立場。でも、ここまで来るには必ず誰かが手を差し伸べてくれました。自分一人では今年の成績も、連覇達成もなかった。人との出会いをどう生かすかは自分次第。今まで僕を支えてくれた人には感謝しかありません。だから、最後はこの言葉を伝えたいと思います。みんな、ありがとう―。(東京ヤクルトスワローズ内野手)
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