■8月6日 「転石苔(こけ)むさず」には相反する2つの解釈がある。このことわざが生まれた英国では「職業や住居をよく変える人は成功できない」が一般的な意味という。国歌に「苔のむすまで」とある日本でもこの解釈で使うことが多いようだ。ところが米国では「活発に活動している人は、いつまでも古くならない」となる。
大谷翔平のエンゼルス残留が決まった際、米メディアやファンから失望の声が上がったのはそれだからかと合点がいった。「もっといいチームでプレーするのがふさわしい」「気の毒」という声には、大谷が転がる石であり続けてほしいという願いが込められているようだ。
小紙サイトが5日に伝えたニューヨーク・ポスト紙(電子版)の特集記事によると、ヤンキースやパドレスなど12球団ほどがトレードのオファーを出したが、エンゼルスのモレノ球団オーナーが聞く耳を持たなかったという。集客やグッズの売り上げが見込める〝カネのなる木〟を手放したくないという思いもあったろう。
残留に対する大谷の胸の内を知りたい。プレーオフ争いに絡めなかった昨季は「楽しい、ヒリヒリするような9月を過ごしたい」と語っていた。10月過ぎまで野球を楽しみたいというのが本音のようだが、球団の現状では…。大谷は米国式転石でいてほしい。
勝手な想像だが、トレードが決まっていたら移籍先で二刀流を拒否されたかもしれず、志願する来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場もNGが出たかもしれない。今はベーブ・ルース以来104年ぶりの「2桁勝利、2桁本塁打」への挑戦が継続されたことと、WBC出場の可能性が残ったことで良しとしよう。(鈴木学)
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