「再婚? ない、ない。これ以上、家族の面倒は見られない」と笑うクミコ。気さくなトークも魅力的だ=東京・渋谷区
ギャラリーページで見る健康で長生きして寝たきりにならず、ある日突然、苦しまず天に召される…。そんなピンピンコロリの大往生は、多くの人の理想だろう。自分の人生に限らず、高齢の親の介護が続く人には切実な願いとも言える。今年デビュー40周年を迎えた歌手、クミコ(67)も、その渦中にある。ぬくもりあふれる歌声で人々を癒やし励ます中、私生活の本音もざっくばらんに明かした。(ペン・森岡真一郎、カメラ・土谷創造)
「愛の讃歌」などシャンソンの名曲に加え、「わが麗しき恋物語」など泣かせる歌で魅了してきた円熟の歌姫。NHK紅白歌合戦に初出場した翌年の2011年3月、宮城・石巻市で東日本大震災も経験した。その心の傷が癒えた矢先の12年、当時80代だった両親の介護は突然やってきた。
「母が自転車に乗ったまま転び、両腕を骨折したのをきっかけに、家事のほとんどを私がするようになったんです。あれからもう10年になるんですね」と振り返る。
バンドマンだった夫と26歳で結婚し、33歳のときに離婚したクミコは現在、東京都内のマンションに1人で住む。母のけが以来、近くの3階建て住宅で暮らす両親の元に自転車で通い、毎日のように家事をこなしてきた。娘に支えられてきた両親は現在、94歳になった。
「口うるさい両親に『うっせえぇ!』と心の中で叫んだこともありますよ(笑)。でも、認知症の父は昨年12月、ぼうこうがんの手術を受け、しもの世話が大変になったので老人ホームに入ってもらいました」と気丈に説明。とはいえ、父がふさぎがちにならないように、3日に1度は励ましに行き、実家の母の元には今もほぼ連日、家事手伝いに通う。