日本ハム、ヤクルトでプレーし、ファンから愛されながらも惜しまれつつ2017年に現役を引退した今浪隆博さん(37)は、スポーツメンタルコーチという分野でアスリートのサポートを目的に活動している。
「悩んでいる選手の助けになりたいんです」
ユーティリティープレーヤーとして活躍していた今浪さんは、2016年頃から、むくみや倦怠(けんたい)感に襲われるようになった。甲状腺機能低下症だった。同時に精神面でも苦しむようになっていた。
「人と会いたくない。球場に向かう車中では理由もなく涙がボロボロと出続ける。とにかく苦しかった。野球が嫌いとか、球場に行きたくないという感情はなかった。ただ、自然とつらかった」
当時は甲状腺異常に起因する症状だと思っていたが、薬を服用していたこともあり甲状腺の数値は安定していた。何とか改善したいとセカンド、サードオピニオンで病院を巡ったが、いずれも「異常なし」。神頼みで「おはらいにも行きました」と振り返る。
日本ハムで活躍していたときの今浪隆博さん原因不明の精神面の不安定さを抱えながら結果を残せる世界ではない。故障も重なり7試合の出場に終わった17年に戦力外通知を受け「正直、疲れてしまった。辞めるしかない」とユニホームを脱いだ。
同年オフ、自身の講演をきっかけに知り合った精神科医に話したところ「それは鬱の症状ですよ」と言われた。甲状腺に関する病院を必死に巡っていた今浪さんは「衝撃でした。一気に解決した。鬱の治療をしておけばよかったんだ」とモヤモヤが晴れた。
自分のように苦しんでいるアスリートはたくさんいるはず。救いたい。すぐに日本スポーツメンタルコーチ協会の講座を受け、18年に「スポーツ-」の資格を取得した。今浪さんが調べた限りではトップアスリート出身の同コーチはいない。
「僕が野球選手としての現場の経験を生かした存在になれるんじゃないかと思いました。今の僕なら当時の今浪隆博を救ってあげられると思う。もっと長く現役やれていたかもしれない」
現在は講演やスポーツチームをサポートして活動している。自らコンタクトを図り、中学の硬式野球チームの練習にも参加して技術、精神の両面から助言を送る。
「まだまだ認知度の低い分野。プロ野球選手だった自分が活動して、もっと広く知ってもらいたい。それが広がった先に自分の理想も展開されていくと思います」
苦しんだ経験を生かしたセカンドキャリア。今浪さんは過去の自分と向き合い、前へ進んでいる。(湯浅大)
今浪さんの公式サイト(https://mowa-smc.com/)
公式チャンネル(今浪隆博のスポーツメンタルTV)