今季のヤクルト先発陣の柱といっていい存在だ。7年目の高橋奎二投手(24)は開幕ローテーション入りを果たし、ここまで3勝0敗、防御率2・48と安定感抜群。その上、先発した6試合はすべてチームが勝利している。
それでも2軍監督時代から左腕を間近で見てきた高津監督は、今でも手放しで褒めることはほとんどない。1失点完投勝利を挙げた4月10日の巨人戦(東京ドーム)では、『きょうは奎二の日』と形容し、好投を称えはしたが「立ち上がりは褒められたもんじゃない。プレーボールの初球から力みばっかり先行していた」と〝指摘〟。それ以外の登板でも、何かしらの〝指摘〟がある。それは高橋奎二という投手が持つポテンシャルの高さからくる期待の表れでもある。
高橋が持つ向上心も計り知れない。自宅で何気なく野球中継を見ていて、エースの矜持を垣間見た瞬間があったという。
「中日の柳さんがベンチに帰ったときに『自分は代わる気ない』という雰囲気を醸し出していますよね。『絶対、長いイニング投げてやろう』って。ああいう気持ちが大事なのかなって。俺がこの試合投げ切るという思いを持ってマウンドに上がることも大事かなと思います」
最後まで投げ切る、その達成感と快感がまだ体に残っている。昨季の日本シリーズ第2戦(京セラ)で完封勝利、そして今季も1点差で完投勝利。最後までマウンドを譲らないという気持ちが自身をさらに奮い立たせてくれる。「やっぱり最後まで投げ切るのが一番の理想。投げ切ったら気持ちいですし、完投した巨人戦は最後、ヒヤヒヤする場面もありましたけど、ああいうことも九回のマウンドに上がらないと経験できない。高橋だったら抑えてくれるっていう安心感を持たせる投球がしたい」を見据える。
まだまだできる―。高橋は、高津監督の思いも十分に感じ取っている。だからこそ、常に上のレベルを目指してエースという存在に近づこうとしている。(横山尚杜)
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