■5月13日 とにかく驚いたし、むなしく寂しい。それなのに、急死から一夜明けた12日もテレビの情報番組で熱湯風呂やキレてからのキス芸を見るたび、思わず声に出して笑ってしまった。ばかげたことを全力でこなした芸人魂は今後も映像を通じ、国民を楽しませ続ける。他ならぬお笑いトリオ、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんである。
「失笑でもいい。笑ってもらいたい」というのが信条。どこか悲哀のにじむギャグやコントは、いじられキャラの竜兵さんならではだった。それにしても、61歳は若すぎる。サラリーマンなら、定年退職して第二の人生に踏み出したり、リタイアして余生を楽しむ頃か。
竜兵さんの場合、2年前に新型コロナウイルスによる肺炎で死去した師匠の志村けんさん(享年70)と同様、陰影の濃い役もこなせる俳優として注目されてきた矢先だった。若い頃は俳優志望。しかし、年齢のせいなのかどうかは不明だが、「物覚えが悪くて…」とこぼすこともあったという。
さらに、コロナ禍の飛沫感染防止のため、得意のキス芸や熱湯に入った後に口からお湯をピューッと吐き出すことも思うようにできなかった。その上、自ら死を選ぶほどの悩みを抱えていようとは…。結婚28年の妻でタレント、広川ひかる(51)ら遺族や仲間、友人たちの胸中を思うといたたまれない。
竜兵さんは2009年、思春期の世代に向け、著書「人生他力本願」を出版。「真面目に一つのことを続けること。それが一番大事」と説き、会見では志村さんや後輩芸人に向け、「いつも助けられ生きてきた」と感謝した。その結果の今だったはず。もっと周囲の力に頼ってほしかった。残念でならない。合掌。(森岡真一郎)
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