サッチーに〝変装〟して安芸キャンプに現れた上島竜兵さん。最高に笑わせてもらった 訃報と縁遠いと思っていた方なので、ビックリした。「中野猛虎会」の一員だった上島竜兵さんは、サンスポが発刊していた阪神特集の雑誌にも何度か登場していただいたし、野球ファンが集まる居酒屋「あぶさん」で、サンスポのコラムでもお馴染みのダンカンさんらと一緒になって、一度、歓談させていただいたことも。
「最近の阪神ファンはマナーが悪い」
そういえば、憤慨されていた。
最高に笑わせていただいたのは、1999年2月。名将・野村克也監督が阪神にやってきた年の春季キャンプのことだった。某テレビ番組の企画で、監督夫人の沙知代夫人に〝変装〟してキャンプ地・安芸に乱入したのだ。
どれほど似ていたのかは、見る側の個人差はある。少なくともわがサンスポの当時の後輩トラ番記者は、キャップだった私に「サッチーが来てます!」と報告してきた。球団広報に聞くと「そんな話は知らない」という。確認するしかない。遠目にもよく分かる〝サッチー御一行〟に接近してみたら、ダチョウ倶楽部のメンバー、肥後克広さんと寺門ジモンさんが両サイドを固めて「ハイ、近寄らないで!」と笑顔で群がるファンを制止していた。
肝心の〝サッチー〟は、どこからどう見てもニセモノ。トラ番の後輩を「お前の目は節穴か!」と叱った記憶が。
でも、思い切り笑った。一年中、プロ野球の取材をして、それをウン十年繰り返して、名シーンも、凡プレーも、山ほど見て、感動もした。落胆もした。が、腹の底から笑ったのは、あの日あの時がMAXだった気がする。
ニセサッチーは、グラウンド内で練習していた後の阪神監督・和田豊や、今やビッグボスとして君臨している新庄剛志に向かって「うち亭主の名誉が掛かってるんだから、しっかり練習しろ」と〝絡み〟だした。
それまで沈黙していた阪神球団も、ここに至って激怒。そもそも、アポなしの収録だったらしく、上島さんらは阪神に〝出入り禁止〟になってしまう。ペナルティーを受けた上島さんは、すごく殊勝な態度で、直後のわがサンスポの雑誌出演も自粛された。
よくよく考えると、ファンのマナーを強く批判していた方なのに、思いっきりメチャクチャなマナーだった。「押すなよ」「押すなよ」、そして押されて熱湯へドボン-。あの芸風と全く同じだったのかもしれない。
訃報には言葉もない。でも、記者生活で一番笑わせてもらったことは感謝したい。
想定外の大爆笑など考えにくいのが、令和の時代。制約も厳しいコロナ禍の時代。せめて笑顔になりたい。そのためには、タイガースの勝利が不可欠だったのだが…。
「きょうから糸井さんをスタメンに加えて、攻撃的な打線を組みました。完封ばかり見せられているので、とにかく点が入る野球で、ファンを喜ばせて欲しいです」
キャップ長友孝輔の期待通り、糸井は奮闘したが、阪神が奪ったのは一回の2点のみで、またまた広島に敗れた。開幕から7連敗。きょう12日は雨模様。中止かも。
ということは、広島戦初勝利は6月21日以降? そんな先? 天国の上島さんは怒ると思う。
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