一票の格差是正のための衆院小選挙区定数「10増10減」が、波紋を広げている。公平・中立な議事運営が求められる〝行司役〟の衆院議長、細田博之氏が繰り返し反対を表明。細田氏の発言には野党側だけでなく、与党の議長経験者からも苦言が出ている。
一票の格差は憲法の定める投票価値の平等に反するとして違憲判決が相次ぎ、放置できない問題だ。格差是正は当然の流れ。だが地方の人口減少傾向で、定数を調整しようとすると地方の議席が減らされることになる。細田氏も「地方いじめ」と強調。ただ細田氏は、「10増10減」の算出根拠である2016年法改正の際の議員立法提出者の一人でもある。
過去にも選挙区の見直しにより、現職議員が比例区や参院に転出した例があった。自身の選挙区にこだわりを持つのも当然で、小選挙区の議員と地盤がない比例区の議員とでは国会での扱いや初入閣の時期などにも影響が出てくるのが現実だ。
細田氏の発言は、「10減」の対象に安倍晋三元首相の山口や二階俊博元幹事長の和歌山などが含まれていることを考慮してのことか、地方に強い自民党全体を考慮してのことか、自身が今回の減少対象ではないが地方(島根)が地盤だからかは定かではない。
細田氏は永田町で「選挙博士」と呼ばれるほど選挙区事情に詳しい。独自の「3増3減」案も主張しているが、「10増10減」は法律で既に決められたこと。法を作った国会議員が、これを簡単に覆すということはあってはならないはずだ。
議員の地方減と都市集中については議論を続ける必要がある。上院と下院がある米国の上院は各州2人と州単位が基準。平等の〝基準〟をどこに置くのか、知恵の出しどころといえる。(政治評論家)
=毎週日曜掲載
この記事をシェアする