2018年平昌五輪のスピードスケート女子団体追い抜きとマススタートで金メダルを獲得した高木菜那(29)=日本電産サンキョー=が5日、現役引退を正式に発表した。東京都内での記者会見で表明した。
「高木美保の姉ではなく、自分の意志で高木菜那として氷の上に立ち、戦えた」ことと、「第2の人生を考えたときに、すごくワクワクした」ことが、引退を決めるきっかけになったとした。1500メートル世界記録保持者で、平昌五輪で金銀銅、2月の北京五輪で1000メートルの金ほか4つのメダルを獲得した高木美帆(27)=日体大職=は実妹。
今季最後のレース、オランダでのW杯最終戦を終えて帰国し、隔離期間中に「現役続行か引退か悩み、考えた」という。「もっと長い距離のトレーニングをしたら1500メートルも強くなる」との思いもあったが、北京五輪を目指した今季は「覚悟をもって取り組んできた1年間。それ以上の覚悟がないと、もっと速くはなれない」。最終的には長年指導を受けたヨハン・デビットコーチの任期満了など「いろんなタイミングが重なり」決断したという。
平昌五輪では団体追い抜きとマススタートで優勝。日本女子で夏冬を通じ、初めて五輪1大会で2つの金メダルを獲得した。個人の力で勝ち取った平昌五輪マススタートの金メダルは「私が頑張ってきたことに対する神様のプレゼントかなと思っている」と話した。
一方、北京五輪では団体追い抜き決勝で転倒し銀メダル。「つらかったけど、チームのありがたみや仲間の大切さを感じられた。頑張ってきたから、こういう大切さを心から感じられた」。そう振り返り、「どちらも私の心に残る五輪だった」と話した。
美帆を妹に持ったことは「乗り越えないといけない壁。すごいつらかったが、それがなければ今の高木菜那はいない」と感謝した。一方、ずっと「高木美帆の姉」という立ち位置にコンプレックスがあったが、今季W杯中に「(妹と比較して)自分を否定することしかできていなかった。こんなに頑張ってきたんだから(自分を)褒めたいと思った」。そう考えたとき「高木菜那として氷の上に立てた」と、思いを説明した。
今後は未定だが「いろんな角度からスポーツを学んでみたいという思いと、伝えていきたいという2つの思いがある」。スポーツキャスターや講演活動などを示唆した。
会見終了後にはサプライズも。姉に知らせず会場にきていた美帆が控室でプレゼントを手渡し、その様子を自身のインスタグラムでライブ配信。菜那は「こんな優しい妹だと思っていなかった」と笑っていた。
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